
少子高齢化が進む日本においては、2020年3月の高年齢者雇用安定法がk改正され、これまでの「65歳までの雇用確保」義務に加え、「70歳までの就業機会の確保」の努力義務が新設されるなど高年齢者の雇用対策が推進されています。この度、マンパワーグループでは企業の人事担当を務める20代~50代の男女400名を対象に、「65歳以上のシニア就業」における実態調査を行い結果を公表しました。公表結果によりますと約4割が「65歳以上のシニア就業確保」に対応済みで、「予定・検討」も含めると8割弱の企業が推進していることが分かりました。人生100年時代を迎えて、20代・30代の若い世代の働き方の考え方に変化が見られますが、今回の調査で一般社員に対して「何歳まで働きたいと思っていますか?」との問いに65歳まで働かなければならないのとの回答が最も多く(31.3%)、65歳まで自主的に働きたい(28.5%)を若干上回っています。興味深いのは自主的に「生涯現役」を考える(18.5%)、生涯現役で働かななければならない(14.3%)と人生100年時代を反映するかのように生涯現役で働ける環境を意欲的に求めて求めている人が多いようです。しかし、人事担当者が実感している課題として、体力・能力・モチベーション・健康管理・業務内容・若手人材のバランスなどを懸念する声が多いようです。

雇用の関する質問では、65歳以上の働き方に関して、「今の会社で働きたい」「正社員として働きたい」がそれぞれ7割近くが回答しています。高年齢者の環境整備の対応を進めるためには、体力・能力等の加齢による変化に配慮した上で配属や業務配分を考える必要があると同時に、リテンション施策の実施、キャリア自立支援も重要になってきます。今回の法施行に伴うシニアの就業機会努力義務を、法律によって定められている理由だけで推し進めてしまうと高齢者社員その他の社員にとって良い状況をもたらしません。高齢者の活躍推進が、事業や組織にどのようなポジティブな面があるのかを把握した上で、どのような役割で活躍してもらうのかを本人の経験・意向を踏まえて合意することが大事です。長い経験ゆえの専門性のある知識や積み上げられたスキルを持ち、社内や業界内での人脈も組織にとって価値ある資産となる可能性があります。そのような知識・スキル・人脈を、若い世代に伝承していく役割として事業や組織に貢献してもらうことも期待できます。また、時代が多様な価値観・人材を活かすことでイノベーションをうみ価値創造につなげようとするダイバーシティ経営が注目されています。高齢者もまた多様な視点をもたらすダイバーシティを持った人的資源と言えます。高齢者が働きやすい職場環境の整備は、多様な働き方で働くほかの社員にも良い環境をもたらすことになります。