
2020年のOECDにおける日本の時間当たり労働生産性は、アメリカの6割水準に相当し、加盟38か国中23位(2019年21位)とデーターが取得可能な1970年以降、最低の順位となっています。日本生産性本部では、日本の労働生産性低下の原因と改善策のへの意識を探る「生産性課題に関するビジネスパーソンの意識調査」を実施し7月11日に結果を公表しました。調査は従業員規模300人以上の企業で働くビジネスパーソンの経営層・管理職・非管理職合計2746名対象に今年4~5月に行ったものです。地方の中小企業にとっても興味ある結果となりました。「日本の労働生産性に対する危機感」の質問では、「かなり危機感がある」との回答は、非管理職では26.6%でしたが、役職が上がるのつれ高くなり経営層では41.0%となっています。非管理職では、「わからない」が18.2%、役職が下がるにつれ高くなる傾向がありますが、「危機感がない・計」18.1%を合わせると36.3%と生産性向上に向けた取り組みには関心が薄いようです。日本のメンバーシップ型の雇用では、言われたことをこなせば評価される傾向にありますので、仕方がない結果と思われます。「働きかたと業務プロセスにおける疎外要件」では2つの選択肢を答え、「無駄な業務が多い」が全役職・産業共通で4割台と最多という結果になり、続いて「価値観や仕事のやり方が以前と変わっていない」も役職・産業を問わずに3割程度の回答になっています。解決策としては個人業務の見える化、業務の自動化・標準化が必要になりますが、現場では進んでいないことが窺われます。

その他の回答選択肢の結果は、「仕事の仕組みデジタル化が進んでいない」(36.3:28.7:24.6)役職が上がるほど高く、「新しいことにチャレンジしにくい組織風土である」(26.6:24.2:19.3)も同じ傾向にあるようです。「ダイバーシティー&インクルージョンが進んでいない」(12.3:11.7:7.8)となっています。これらの結果から見えてくるのは、経済・社会環境が大きく変化しようとしていても、従前の組織体制のまま改革を行おうとしているといる、もしくはまだ結果が出ていないと思われます。働き方改革と生産性向上は表裏一体の関係にあり、企業ごと独自の制度をつくる必要があります。「付加価値向上のため重視すべき取り組み」の質問では、「新しいビジネスモデル創造」が経営層・管理職は4割超で最も多く、非管理職も3割を超える結果となりました。「イノベーションを起こす」経営層・管理職は3割を超えていますが、非管理職では2割と10ポイントの差があります。非管理職の回答が経営層・管理職を上回るのは「現状の業務改善を進める」(29.5%)「わからない」19.0%になります。日本型雇用の制度下(メンバーシップ型)では、当然の結果と思われます。経営層・管理職は、新たな仕事を作り、組織を動かすためのマネジメントについての知識がありますが、それらの教育・自己啓発が少ない非管理職に対するマネジメント教育は、生産性向上のためには必要です。自分で考え・目標を定め・自己統制による管理を行っていく組織体制・職務権限の委譲・成果物への責任を考える従業員を育てる。ジョブ型人事制度の構築(働き方改革)とマネジメント人材の育成(生産性向上)は、表裏一体です。