
厚生労働省は、このたび「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」をまとめ公表しました。「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、解決を迅速に図る制度で、「総合労働相談」「助言・指導」「あっせん」の3つの方法があります。令和3年度の総合労働相談は142万2579件で、14年連続で100万件を超え高止まり傾向にあります。相談の内訳では、「いじめ・嫌がらせ」が前年に引き続き最多で、「自己都合退職」「解雇」と続きますが「解雇」は前年より減少しています。過去10年間をみて「いじめ・嫌がらせ」は、150%程度増加しており、企業としても対策は講じるものの部下と上司のトラブルは増えてきているようです。リモートワークの普及拡大により社員の仕事への取組み姿勢が見えにくく、期待する成果も部下・上司で共有されず部下の不満が高まっているようです。仕事は、いつまでに、どのように、どのような手段や方法で,期待する成果はここまで、仕事の指示命令は明確にして部下の納得と合意の得るコミュニケーションが必要です。出社して、指揮命令下で仕事を行う日本型システムからジョブ型の仕事の進め方に転換するためには、期待される管理職像もまたマネジメンの仕方も変わることを意味します。

コロナ禍では、感染の忌避や宿泊業・飲食サービス業を中心に多くの雇用機会が失われたことにより、女性・高齢者の非労働力化の傾向にあることや、労働市場の調整機能の低下により失業期間の長期化や求職者の高止まり傾向が指摘されています。今いる社員を大事にしながらも、ジョブ型雇用への転換は徐々に進むとして、これまでの日本の雇用システムの強みである企業内での安定した人材育成や多様な人材活用を強化する必要があります。企業内での労働者の多様性や仕事のやりがい(ワークエンゲージメント)を意識し、労働者の意欲と能力を高め、引き出すこと、デジタル化の対応をはじめとする新たな高度技能を有する人材を育成する必要があります。そのためには、常時、目の前にいた部下に、叱咤激励や価値観の押し付けなど曖昧なマネジメントスタイルを変えなければなりません。
今後、ジョブ型雇用が広がっていけば業務推進力を持つ一匹狼(専任職・専門職)の採用が主になりますが、この仕事人を組織目標達成のため上手くコーディネートするのが管理職の役割になります。今までとは全く違う管理職像ですが、今までの部下・上司の関係から人材育成の仕組みづくり、コミュニケーション力・人間力を強化していくことが、ワークエンゲージメントや労働生産性を高めることに繋がります。