
先日、総務省の委託事業としてテレワーク推進に当たる事業体からの依頼で「テレワークの基本と労務管理」という演題で、WEBセミナーの東北地区講師を務めました。緊急事態宣言の発出が多い首都圏等に比べて、東北の企業ではテレワークの関心も薄いようで、セミナーの応募企業も定数に満たなかったようです。また、ある企業のテレワーク・リモートワークに関する今年6月時点での調査では、「リモートワークは行われずに、以前の働き方と変わらない」とする回答が55.8%と、昨年春の緊急事態宣言以降、何とかテレワークを導入したもののデメリットを解消できずに出社中心の勤務に戻ってしまった企業も多くあるようでです。テレワークといえば在宅勤務との発想が強く、該当する業種・業務も限られてしまうと考えるのかもしれません。
テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用かていせいたした、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方を言います。就業場所によって自宅などの仕事の場所とする在宅勤務、自宅近くや会社途中の場所に設けられた事務所でのサテライトオフィス勤務、労働者が自由に働く場所を選択できるモバイル勤務などがあります。業種的にテレワークができない、又は職場のすべてがテレワーク出来るわけではないという回答のほか、会社のペーパーレス化が進んでいない、ネットワークの準備が進んでいない、個人用のノートPCがないなど、オンライン化、システム化の準備が進んでいないとの回答の多くあります。また、経営者や会社の方針として「テレワークをしない」と判断している会社も多いのも事実のようです。

既存のビジネスプロセスにデジタル技術を取り入れ、業務の効率化を図ることをデジタイゼーションといいます。ワークフローシステムで各種文書や申請手続きを電子化するなどがあたります。また、その先にデジタル技術を活用してビジネスプロセス自体を変革し、新たなビジネスモデルを生み出すことをデジタライゼーションといい、自動車の販売から、カーシェアリングサービスへと転換などが考えられます。デジタルトランスフォーメーション(DX)は、これらのステップを踏んで、データやデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立することと定義されています。
コロナ禍や市場の急速な変化に柔軟に対応するためには、既存のビジネスに固執せずDX推進に取り組み、市場における競争力の強化に努める必要性が事業継続確保のためにも喫緊の課題になっています。企業の取り組む課題、テレワーク導入の目的も「働き方改革」「生産性の向上」「人材の確保・育成」「コストダウン」「事業継続」などさまざまですが、情報通信技術を活用することに変わりはなく、結果としてテレワークは導入されるでしょう。テレワークなどのDX推進には、明確な経営戦略の策定が欠かせませんが、将来の目的を見据えつつもアナログ業務の電子化からスモール・スタートして段階的にデジタル技術を導入活用していくのが大切です。DXの基本的流れは「デジタイゼーション」→「デジタイゼーション」→「DX」です。