
働き方改革は、働く人たちが個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革です。日本が直面する少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や働く人たちのニーズの多様化などの課題に対応するためには、日本の長時間労働の悪しき習慣をなくしていかなければなりません。昨年4月からすべての企業に時間外労働の上限規制が適用されています。そのような中、厚生労働省では昨年11月に実施した「過重労働解消キャンペーン」における重点監督に実施結果について5月7日付け公表しています。
今回の重点監督は、長時間の過重労働による過労死等に関する労災請求のあった事業場や若者の「使い捨て」あが疑われる事業場などを含め、労働基準関連法の違反が疑われる9,120事業場に対して集中的に実施されたものです。実施結果は、全体の71.9%にあたる6,553事業場で労働基準関係法令違反が認められ、違法な時間外労働があったものが2,807事業場、賃金不払残業があったものが476事業場、過重労働による健康障害防止措置が未実施おもんが1,829事業場の結果でした。事業規模別の監督指導実施の事業場数を見ると、従業員29人以下の事業場が全体の7割と規模の小さい事業場での対応の遅れが目立つようです。業種別では製造業・商業での監督指導が目立ちました。

長時間労働の原因として考えられるのは、仕事量が多すぎて時間内に処理できないことや何らかの事情で人手不足になってることがあります。次には管理職が部下の業務量や進捗状況を把握していない管理上の問題や無駄な朝礼や会議が多いこと、長時間労働をよしとする企業文化があります。これらは管理者の労働時間に無頓着なマネジメントに原因があります。三つめは働く人の職務遂行能力の不足や人材育成のできない組織風土だったり仕事の進め方に問題があるケースです。多くの企業で一つの原因ではなく、複合的な課題と考えられますがありますが、仕事の進め方を改善したり時間の使い方を意識することで働く時間を短くするとは出来ます。
将来的には、同一労働同一賃金の方向性から企業内でフルタイムで働く人とパートタイムで働く人に分かれていきます。結婚や出産、育児、子育てや親族介護など人生のステージに合わせて、男女の性差ではなく夫婦のコンセンサスによりフルタイム・パートタイムの選択ができる会社が求められる時代がきます。最も生産性が高い労働を生み出す時間は、一日7時間といわれいます。EU労働時間指令の厳格な運用(残業含め週48時間限度)をしているフランス・ドイツの時間当たり労働生産性(世界7位、8位:2016年)を見ても明らかです。日本は長時間労働による収益の確保が出来ていますが、これからは時間単位の生産性を、すべての働く人が意識しないと立ち行かなくなります。このような活動は一朝一夕でできるおとではないので、まずは労働時間の使い方を意識してもらうことから始めてはいかがでしょう。