
日本型雇用システムでは、企業戦士である男性正社員を主力に、女性は将来、専業主婦になることを前提に補助的業務を担う一般職につこうとする人が多数でした。システムの大きな変動は1990年代に専業主婦世帯数を共働き世帯数が逆転し、一つの企業で男性の収入だけで退職まで家庭生活を支えることが難しくなりました。今では多くの世帯で夫婦ともに働き、家事を分担することが常識になっています。日本型雇用システムでの常識である個々の労働者の職業生活を企業が丸抱えしている問題、この解決として期待できるのが働き方改革の各施策です。労働者が主体的にキャリア展開を考えなくてよい優しく過保護の時代は終わろうとしています。この度、労働政策研究・研修機構よりタイトルの調査結果が公表されましたので、紹介します。
ジョブ型の働き方では、新卒者の一括採用といったこともなく、就職するために習得したスキルを発揮できる就職先を考え、企業での経験の蓄積しながら、自らのキャリア戦略を描き実践していきます。キャリア展開を企業に任せてきた日本の労働者とは根本的に違います。人材育成・能力開発の調査でも、変革が求められる日本企業にとって大事な年になりそうです。しかし、人材育成・能力開発について特に方針を定めていないとする企業が29.6%に上り、2016年の前回調査の18.2%を大きく上回り、規模別では9人以下の企業で4割超(42.2%)と特に高い結果になっています。取り組み方針について「今いる人材を前提にスキルアップを目的とした能力開発」(34.4%)、「個々の従業員が当面の仕事をこなすことを目的とした能力開発」(24.7%)、「数年先の事業展開を考慮し必要となる人材を想定した能力開発」(11.5%)という結果でした。コロナ禍で、多くの業種で事業の変革が求められ時代にあっては、将来を見据えた人材育成が最も必要と考えます。

新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着いた後、「仕事のやり方」や「働き方」の変化に伴って予想され人材育成・能力開発の影響として、33.8%の企業が「個人の仕事の範囲や役割が明確になることを挙げています。重視する人材像を尋ねた結果「生産性や効率性に対する意識が高い人材」(49.3%)が最も高く、次いで「環境の変化に対応できるタフな人材」(48.6%)、「自己啓発を行うなど自ら能力を伸ばすことに積極的」(42.1%)などとなっています。「ジョブ型」のシステムでは至極当然の企業調査の結果ですが、会社から求められる能力としての労働者調査では、自己啓発の取り組みについて13.8%と低く、個人に着目して自己啓発等を重視する企業の姿勢とのギャップが見られました。
労働者調査において、能力開発により会社への定着意欲が22.5%の人が「高まった・やや高まった」と回答し、26.2%が仕事に対するモチベーションが「高まった・やや高まった」と回答しています。一方で、必要な能力を会社が考えていない、または必要な能力を分かりやすく明示していないなどの不満、企業規模が大きいほど、技能・知識について十分な指導してくれる上司・先輩がいないなど「ジョブ型」のシステム移行への課題も見えています。調査の属性として、ほぼ全業種の全国7624社の回答で90%以上が中小企業、労働者は10,000人と調査の信頼度は高く、業種・規模・地域を問わず同様の傾向にあるようです。「ジョブ型」に働き方に対応するためには「職務分析」がなければ無理です。これを行ってから人材育成・能力開発の方針を決定することになります。