中小企業の人事評価制度

 同一労働同一賃金の推進により、従来の日本型雇用形態である「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へと人事制度全体を、大企業を中心に大きく舵を切ろうとしています。コロナ禍の一定期間、多くの企業で事務や企画など職種を中心に在宅勤務を実施した結果、慣習的に継続されていた業務が時間や環境の制約によって不要な業務が明確になり、業務そのもの見直しや勤務制度の見直しから必然的に「ジョブ型」へ変化していったようです。同時に従来の社員の職務上の態度・ふるいまいが評価軸であったものを、成果が報酬に反映できる仕組みにするという人事評価の課題が浮き彫りになりました。働き方改革により勤務時間・体制の見直しが進む中、コロナという外的要因が一挙の加速させたのかもしれませんが、中小企業のおいても「ジョブ型」への転換が、アフターコロナ時代には解決すべき課題になりそうです。

 

 大企業では、期待する職務の遂行能力により従業員の序列づけを行う「職能資格制度」を導入している企業が多数です。従業員に様々な仕事、経験させることで人材育成面に大きな効果を発揮してきたのも事実ですが、ジョブ型として個人能力を評価の基準を付加するなど人事評価の変革に取り組む企業も増えています。日立製作所のジョブ型雇用の取り組みは知られていますが、ジョブ型の人事評価の特徴は「明確にされている職務の結果や青果物のみで評価する」としており、メンバーシップ型(職能資格制度)で重視されるプロセス評価はほとんどありません。来年7月から国内従業員の約7割にあたる約2万3千人をジョブ型人事制度の対象とすることを表明しています。中小企業がジョブ型に移行するために必要なことは仕事を明らかにすることです。まず職務を洗い出して、具体的な仕事の遂行基準と能力の格付けを行い、職務基準書を作成することです。コツさえわかれば難しい作業ではありません。

 

 

 職能資格制度が日本で取り入れられたのは1975年頃からです。同世代の優秀な社員が育ってきましたが、課長職等のポストが足らずに課長職の資格を数人に与えその内の一人が実際の職位につく仕組みを創りました。現在、中小企業では、人手不足から人材育成が遅れポストはあるけど人が育っていないと嘆く多くの経営者の方に出会います。人事制度は、単に人事評価を行い給与の決定方法を変えることではなく、経営理念や組織風土に基づいてマネジメント層の育成や定着率の向上など実現のための組織体制をつくるために仕組みです。「人事評価制度」も「給与制度」も、そのツールの一つにすぎません。

 

 多くの中小企業では、受け継がれてきた経営理念が醸し出される企業の風土というものがあります。「ジョブ型」への移行は、優秀な人材の採用・定着あるいは人材育成などのためにも必要なことであり、それらの中核的な役割を担う「人事評価制度」は必要なツールです。中小企業の人事評価制度は、期待される職務の結果・成果の評点を大きくする仕組みだけではなく、従来のメンバーシップ型の評価基準も重視されるべきだと思っています。大企業のやり方を中小企業で行ったら失敗する可能性が大きいと思います。会社によって人事評価の仕組みが変わるのが当たり前で、人事制度構築にはゼネラリストを期待する幹部職員を入れたプロジェクトチームで進めることをお勧めします。楽しんで仕事を進めてくれます。