希望退職募集と雇用調整

コロナ禍での雇用調整策として行われてきた計画休業の伴う雇用調整助成金の特例も12月末の終了が決まり、中小企業の人員削減問題は今後増える見込みが高まってきているようです。ここひと月を見ても東芝、ワタナベウエディング、コカ・コーラBJH、ワールドなどの大手企業での希望退職者の募集があり、9月末時点での上場企業の早期・希望退職者は1万人を超えたそうです。中小企業でも会社の業績の落ち込みなど理由とした、ローパフォーマー、問題社員の人員削減や非正規雇用の雇い止めなどの雇用調整が、今後増えると思われます。できれば雇用契約の終了にはトラブルを避け、使用者側が法律を理解して労使の話し合いによる円満な解決に至るのが理想です。

 

 しかし、退職を理由とする労使トラブルも増えており、合同労組ユニオン加入案件も多くなっていると聞き及んでいます。以前と違って経営者も「解雇」のリスクを避け、「退職勧奨」で退職してもらうケースが増えてきているようです。令和の時代は経営者が「解雇」と発しただけで大騒ぎとなり、それだけで賠償として数百万円の金銭がなくなると警鐘を鳴らす弁護士が多くいます。使用者側が労働者に、自発的に退職することを勧めて労働者が納得して退職に応じることが「退職勧奨」です。労使双方の合意に基づく雇用契約の終了で、一般的に「合意退職」といわれています。ここまで至れば使用者は、合意退職に関する書面と取り交わしが必要になります。労働者の気が変わって「撤回」ということもあり得ますし、トラブルの原因になります。できれば大手が行っている「希望退職募集」が日本の文化にあっているのかもしれません。

 

 整理解雇を説明すれば、①人員削減の必要性②解雇回避努力義務③人員選定の合理性④労使交渉の4要件の充足が必要ですが、雇用調整助成金活用で、②の解雇回避はできる判断がされそうで無理なようです。大手企業で行うように、規定の退職金の他、上積み退職金を支払う「希望退職募集」では、資金面での問題のほか、優秀な人材ほど募集に応じるなど人材に限りのある中小企業では死活問題なりかねません。やはり特定の従業員に「退職勧奨」を行って「合意退職」に至るのが良策となりますが、退職勧奨に至る経緯と現在の企業の状況についての説明は重要で書面にされた方が良いです。また、話し合いでは整理解雇と勘違いされないよう注意が必要です。

 

 企業を守るため「合意退職」に応じ、失職する従業員は気の毒です。何らかの金銭の支払いと結論を急がず、話し合う企業側の努力は必要です。雇用保険の失業給付に関して、「退職勧奨」による離職になりますので退職願を書いたとしても「会社都合による離職」として扱われ、従業員は速やかに失業手当の受給ができます。会社には、一定期間の助成金申請ができないなどの不利益が生じますが致し方ないことです。新型コロナの影響に関する政府の助成金・資金繰り支援策は一時的な売り上げ減少への対応という側面が強く、コロナ影響の長期化も視野にデジタル化などの構造変化に応じ、事業転換を進める時期にきています。また配置・能力開発等の人材マネジメントの見直しも必要になってきています。