仕事を作るのは社長・・・

 最近「うちの社員には危機感がない」という社長の声を聞くことが多くなってきました。景気や会社の業績が良い時には、あまり聞かない話ですが、コロナ禍で売り上げが下がり、業績が振るわなくなるなどの理由で増えてきたように思えます。景気が悪くなったり、会社の業績が下がって危機感を持ち始める社員はいるとしても、危機感を捨てる社員はいないと思います。社長自身が、コロナ禍で今までの「やりかた」が通用しない、対応の仕方がわからない、打つ手がない状況が「うちの社員には危機感がない」という言葉になって表れている気がします。こんな時代であっても「仕事を創る」ことは、社長の仕事であり、社員は作った仕事を社長の指揮命令下で「仕事をする」ことが仕事です。

 

 会社の目的はただ一つ、それは「顧客の創造である」とはドラッカーのことばです。顧客を創造するとは、仕事を創造することです。結果として、顧客に喜ばれ、役に立つ商品やサービスの提供が会社の社会的有用性を高め、多くのファン(顧客)を生み出します。ドラッカーは、顧客を創造する機能の一つ、モノやサービスを手に入れることによって得られる満足を提供する「イノベーション」なくして顧客の創造はできないと言っています。顧客創造のもう一つの機能が「マーケーティング」です。顧客のニーズを探りどのようにして顧客が満足する価値を提供できるかを考え、売れる仕組みを提供することにあります。緊急事態宣言下、営業自粛等でテレワークの進捗や「新しい生活」など、日本人の人生・生活の価値観が大きく変わりました。仕事を創る難しさ、厳しさは増しています。

 

 

 コロナ禍で今までの常識が通用しなくなった時代にあっては、全社員が力を合わせて仕事を創っていかなければならない時代だと思っています。しかし、中小企業では、社長に言われた仕事だけをこなして、複雑な課題を解決する経験も少なく、自己の能力開発に力を注いだ経験を持つ社員が少ないようです。会社にあっても課題解決力や目標を決めて努力している社員を評価する仕組み(人事制度)を構築す会社が少ないこと、経営者の多くがもつ結論から考える思考力が試される場面では難しいかもしれません。2017年アメリカ・ギャラップ社が世界の企業を対象に行った「企業への愛着心や仕事の思い入れ」調査によると「熱意溢れる社員」は6%と世界139か国中132位、「意欲のない社員」70%と、この辺も変えていく必要があります。

 

 

 近年、SDGsや社会的課題の取り組みを企業経営の責任と捉え、積極的に取り組む企業が増えています。それに呼応して就職・転職を考えるビジネスマンの約6割は、そのような企業で働きたい、イノベーションに関わりたいと思い、仕事として直接かかわりたいと考えている人が4割という調査結果が公表されています。持続可能な世界への仕組み作りの関心を持つ若者が増えていることは良いことだと思います。「顧客の創造」を考える前に企業の成果を上げさせるための「企業の使命」を考えなければなりません。ドラッカーは、企業は社会の公器であり、特定の社会目的の実現と特定のニーズを満たすことにあるとしています。企業も個人も大きく関る課題に中小企業としてDCDsの17の目標をどう考えるか?自社の使命は何か?などの問いに、社長が仕事を作るのではなく社員みんなで作る時代だと考えています。その先に「イノベーション」が生まれ「マーケティング」があります。