緊急事態宣言と休業手当について

 今年4月に東京など7都府県に発令された新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言(その後全国に・・)が、感染拡大が続く日本で再度の宣言発令があるのかが関心の的になっています。緊急事態宣言からの日本経済の落ち込みや諸外国でのロックダウンの効果等など、政府は再度の緊急事態宣言の発出には消極的です。新型コロナによる犠牲者のある程度の増加があっても、経済を優先する舵をとると考えた方が良いのかもしれません。雇用調整助成金の特例が9月30日と迫るなど「休業手当」に関する政府援助はあるものの、永久に続くとは考えずに、「手当のそもそも」を考える時期ではないかと思います。労働基準法では、原則、緊急事態宣言など国の要請に基づく休業など経営者の責任ではない休業に関しては、生活給である賃金の一部(休業手当)の支払いはしなくても良いことにはなっています。

 

  緊急事態宣言後の都道府県知事は学校など公共施設に加えライブハウス、野球場、映画館など多数の人が集まる営業施設の対して営業停止を指示しました。これに対して労働基準監督署を所管する厚生労働省は、4月10日づけで施設、企業の休業は「企業の責任に帰する事案」とはいえず、休業手当を支払わなくても違法ではないという見解を出しました。これに対して、労働者側に立つ弁護団は、緊急事態宣言の効力が有する間における休業は、法的に強制されたものではなく休業の要請であることから、天災事変など不可抗力に該当しない限り、その判断は使用者の責任による休業として労基法26条に定める休業手当の支払い義務は生じると反論しています。双方とも企業は休業回避の努力はするべきとはしながらも、統一的な基準を示さずに、個別の事案として判断という曖昧な結論になっています。

 

 緊急事態宣言下の休業手当の支給義務については、事業継続の要請を受ける業種、休業要請を受ける業種、どちらとも判断されない工場やホワイトカラー業種に区分する必要があります。ライフラインや国民の生活など社会的要請により事業継続を求められる事業では、一部休業を含め経営側の自主的判断で行うものについては、休業手当を支払う必要があります。また、休業要請も事業継続要請もされない業種では、感染予防対策を講じながら可能な限り事業を継続する方向になりますので、休業に関する判断は事業主によるものとして休業手当に支払いが生じます。休業要請をされる業種または休業要請をされる業種ではないが、入居する施設・テナントが閉館することで、休業せざるを得ない企業においては「使用者の責に帰さない」事由として判断すべきでしょう。

 

 現政権においては、「経済を回す」ことを優先して、再度の緊急事態宣言を発布しない方向になっていくとは思いますが、全国的に感染拡大をしている現在、また秋冬にかけて第2波(第3波)の到来は確実です。先日、企業向けに感染予防に関するチェックリストが厚生労働省から公開されましたが、あの程度のもので職場の感染拡大が止められるとは到底思えません。感染または感染の疑いによる従業員の欠勤が増えていったときに、事業の縮小や計画休業を実施する法的根拠(就業規則等)の準備、休業手当の扱いについても労使協議に上、明文化すべきです。労働者にとって生活の糧である給与は大事な事柄ですので、体況のウソをついて出社、職場のクラスター化、事業所封鎖の悪いストーリーを作らないためにも必要な話し合いだと思います。