
東京商工会議所では例年、会員企業への経営実態の即した支援策の実現を目指し、中小企業の抱える経営課題を広く聴取して要望を国、東京都などの関係方面に提出しています。この度2019年9月20日から10月11日まで行ったアンケート調査の結果(回答1507社)が公表されました。調査では小規模企業は法律に定義された従業員20名以下の事業所とされ、中規模事業とは小規模企業以外の中小企業者と区分されています。福島県をはじめ多くの地方でも参考になる調査結果ではないかと思います。働き方改革への対応状況は、中規模企業に比べて小規模企業の遅れ気味で、人材活用についても同じく遅れがあるようです。
収益状況は、「黒字」と答えた割合が過去5年間で最も低くなり、上昇傾向が止まり、業種別では製造業・小売業の低下が顕著である結果となりました。業界の展望では、小売業において拡大・縮小が増加する二極化の傾向がみられますが、他の業種では横ばいとする回答が多いものの業界の競争環境は約5割の企業が激化する予測しており楽観できる経営環境とはとらえていないようです。「売上高」について、「増加」と回答した企業は40.6%と昨年より2.8ポイント3年ぶりに減少しています。事業コスト(人件費・原材料費等)は1年前に比べ増加した企業が6割に達しましたが、事業コストの価格転嫁の反映できた企業は13.2%に留まっています。

経営資源の「ヒト」に関して、4月から実施される「時間外労働の上限規制」について対応済または対応の目途がついている企業は63,6%に留まり、既に施行されている「年次有給休暇の取得義務化」についても約3割の企業が対応に遅れがあるようです。人員の過不足状況についても引き続き「不足」が全体の5割を超え、特に東京オリンピックに向けての地域性もありますが建設業の人手不足が顕著です。外国人材の活用については、小売業。サービス業で外国人留学生を雇用する実態が浮き彫りとなりましたが、昨年4月からの新制度(特定技能)での雇用又は検討している企業は5.2%とまだまだ浸透していないようです。
労働時間の削減等の企業施策に欠かせないITツール活用状況では活用している企業が55.7%に増加しています。経営者年齢別では40歳代以下の経営者では約8割が活用もしくは活用を検討していますが、70歳以上ではできないもしくは必要ないが約4割と最大になっています。具体的な活用状況では「業務システム導入による効率化」「場所を選ばず仕事ができる環境の整備」がそれぞれ60.2%、55.3%と1位、2位となっています。これらについては働き方改革関連助成金の対象となる可能性がありますので検討中であれば来年度の申請準備をされてはいかがでしょうか。HP、SNS、メルマガを活用している企業も36,8%あり、今年度のIT化は加速する傾向のようです。便利なツールも多くなってきていますので、導入しやすい活用されてはいかがでしょうか。