
9月の公表された2019年版「労働経済分析」(労働経済白書)では、深刻化する人手不足により企業の約7割で経営面での影響を受けている調査の結果が出ていました。経営面での影響として「既存事業運営の支障」「新規需要の対応できない」といった現状に深刻な問題化しているもの、また「技術やノウハウの伝承」など将来への課題も4割近くの企業で生じているようです。先日、法人企業景気予測調査10月-12月期(内閣府・財務省)と労働経済動向調査11月(厚生労働省)が発表されましたので、雇用面を中心に紹介したいと思います。
法人企業景気予測調査では、企業景況感(BSI)は大企業では今年1-3月期ぶりの「下降」超となり、中堅・中小企業はいずれ連続の「下降」超となり、前期(7-9月期)より拡大しています。令和2年1-3月期の見通しも大企業は「上昇」超に転じる見通しですが、中堅・中小企業では多少改善の見通しはあるものの「下降」超で推移する見通しです。従業員数判断12月末(BSI)では、大企業は22.0ポイントとなり、平成23年9月末以降34期連続の「不足気味」超の結果になっています。中堅・中小企業はいずれも「不足気味」超の結果でした。令和2年見通しでも「不足気味」超は、大企業、中堅・中小企業を問わず「人手不足」は続くようです。

労働経済統計調査での、生産・売上額等判断DIでは、調査産業全体ではマイナス9ポイント、特に「卸売業、小売業」「製造業」でのマイナスが大きいようです。ところが正社員雇用判断DIでは、調査産業全体でプラス、製造業、卸売業・小売業とも正社員の増加がみられます。正社員等、パートタイム労働者ともに「不足」とする事業所割合が引き続き多く、正社員等労働者では34期、パートタイム労働者では41期連続で不足超過となり、生産・売上額に多少の影響を受けるも、この傾向は続くようです。
今回の調査では多くの企業で「働き方改革」の取り組みを行っていることがわかりました。特に長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現に向けての取り組みは約8割の企業で行っており、前述の労働経済白書で経営上の課題された「既存事業運営の支障」「新規需要の対応」などの解消に必要な取り組みであり、解決のアイディアがでてくるものと思います。同時に現在の労働者に向けて「技術やノウハウの伝承」中核人材の育成は、個人的にはあらゆる企業において喫緊の課題と感じています。日本は経済の停滞もしくは低調な時代を迎えそうな予感ですが、中小企業の大きな経営資源である「ヒト」の育成は、厳しい時代であればこそ企業を救うアイディアを生み出してくれます。いろいろな企業での社員研修をやるたびに感じています。