
9月28日、雇用、賃金、労働時間、勤労者家計などの現状や課題について、統計データを活用して分析する「平成30年版労働経済の分析」(「労働経済白書」)を公表しました。少子高齢化による労働供給制約を抱える日本が持続的な経済成長を実現していくためには、多様な人材が個々の事情に応じた柔軟な働き方を選択できるように「働き方改革」を推進し、一人ひとりの労働生産性を高めていくことが必要不可欠です。こうした認識のもと、働き方の多様化に対応した能力開発や雇用管理の在り方についてさまざまな視点から多面的に分析を行っています。
企業が能力開発に積極的に取り組むことが、翌年の売上高や労働生産性の向上、従業員の仕事に対するモチベーションの上昇などのプラスの影響を与えることがわかりました。また、多様な人材の十分な能力発揮に向けて、能力開発機会の充実や従業員間の不合理な待遇格差の解消など「きめ細かな雇用管理」を推進していくことが重要としています。人生100年時代が見据えられる中、誰もが主体的なキャリア形成を行うことができる環境整備が重要であり、自己啓発の実施促進に向けては、金銭的な援助だけでなく、教育訓練機関等の情報提供やキャリアコンサルティングを実施することが、有効な取組となり得るとしています。

現在、我が国の課題として多くの労使が、人手不足による職場環境への影響を感じており「働きやすさ」の毀損だけではなく「働きがい」の低下を実感しているようです。「働きがい」の低下は、働く方の疲労・ストレスを過度に蓄積し、仕事のパフォーマンスを低下させ、企業経営にも支障がきたす可能性があります。その「働きがい」を向上させるためには、その前提として「働きやすさ」の基盤がしっかり構築されていることが重要で、働き方改革を「働きやすさ」「働きがい」の両観点から、より一層推進していくことで、労使共通の課題である人手不足を緩和していくことが重要なことです。
「働きやすさ」の向上のために重要な雇用管理として、男女、年齢を問わず「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」が必要であると考えている労働者の割合が最も多く、次に「有給休暇の取得促進」「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」が多くなっています。また、15歳~44歳女性にとっては「仕事と育児の両立支援」も働きやすさに関する重要な要素となっています。本白書では「働きがい」を持っては働くことのできる環境を「活力」「熱意」「没頭」の3つが揃った状態である「ワーク・エンゲイジメント」という概念で分析しています。それによると、新入社員の定着率の上昇や従業員の離職率の低下、個人の労働生産性の向上や企業の労働生産性の水準は「働きがい」と正の相関関係があることがうかがえます。「働きやすさ」を感じる職場環境の実現、「働きがい」を向上させる具体的な取り組みは、業種、企業規模を問わず必要な人事・労務の課題となりそうです。