働き方改革と組織開発について

 近年、ビジネス界や研修などで「組織開発」という言葉を耳にする機会が増えてきています。組織開発は略して「OD」(Organization Development)と呼ばれ、1970年代後半から1980年前半にかけてODブームとなり、当時多くの日本企業において取り組みがされていました。今またいくつかの要因や理由により、脚光を浴び始めていますが、「組織開発」の目的は組織の健全さ、効果性を高めること、また自己革新力を養うことです。言い換えれば組織が絶えず学習し続け、外部のコンサルタントの支援がなくても、自ら変革に取り組み続けることを意味します。組織内での協働性を高め、変革における社会的使命、ビジョンを知り、組織をよくするための実践するイメージが持てれば成功です。

 

 組織開発が必要とされるようになった時代背景として、仕事の個業化、成果主義的人事評価、従業員の多様化があげられます。分業、PC導入により個人の仕事(個業化)が増え、社員間の対面コミュニケーションが減ることにより、相互に誤解や感情的な葛藤が生じやすくなっているといわれています。また、成果主義的人事評価により個人の数値や短期的な結果が重視され、戦略実行、関係構築、人材育成などの将来に対する長期的視点から物事を考えることが難しくなっています。職場内の雇用形態(正社員、非正社員)の多様性により、マネジメントは従業員の等質性が高かった時代より困難になってきている企業が、規模の大きい会社ほど課題となっているいるようです。しかし、中小企業でも「働き方改革」の進捗、成功に伴い「組織開発」の必要性が顕在化していきます。

 

 

 すでに人材マネジメントシステム、サブシステムが充実している大企業と違い、中小企業ではチーム力を基礎とした働き方、中核人材が大きな役割を果たしてきました。人手不足の解消に向けて、働き方改革では、日本型人事制度の特徴である「ヒト基準」から「シゴト基準」への変革を目指すことが喫緊の課題になっています。その過程で、課業管理、分業など個人の仕事が明らかになり、業務標準や達成すべき目標など個人の成果が評価の対象になり、生産性向上のためには、当然、個々の目先の仕事が優先されることになります。人手不足ゆえにパートタイマーの採用を拡大すれば、雇用の多様性も拡大し、働き方改革が上手く進んでいることと裏腹に組織開発が必要になってきます。

 

 働き方改革を進める上で、「業務改善」「組織開発」は、両輪といっても過言ではないと思います。仕事基準の課業管理が進めば「個業化」「成果主義人事評価」「雇用の多様性」は避けられず、前述の課題の解消として組織開発の取り組みが必要になります。ヒューマンプロセスの諸問題、技術・構造的諸問題、人材マネジメントの諸問題、戦略的諸問題といった組織開発へのアプローチ方法は企業によって、多くの選択肢があると思います。一例として、 理念浸透など組織文化の変革や組織内の個々の関係性からのチームビルディング、キャリア計画などを推進したり、QC活動を技術構造的働きかけとして活用するのも有効です。組織開発の取り組みは、中小企業の中核人材の育成、企業のリーダー、ファシリテーターを育て、組織文化変革の足掛かりとなりますので、忙しい中でも、取り組むだけの価値はあると思います。