最低賃金の議論と今後について

 今年の最低賃金の行方については、全国一律あるいは大幅な最低賃金額の改定など、中小企業の経営、地域経済に及ぼす影響など懸念される所です。この度、中央最低賃金審議会において、今年度の地域別最低賃金額改定の目安が公表されました。全国加重平均は27円(昨年度26円)引上げ率に換算すると3.09%(昨年度3.07%)に落ち着いたようです。当初5%の引き上げ率も検討されていましたが、中小・零細企業にとっては、4年連続の3%を超える大幅な引上げ率となりました。

 

  政府がまとめた経済財政運営と改革の基本方針では、最低賃金の全国平均1000円の早期達成を盛り込んでいます。今回の参議院選挙でも、立憲民主党、共産党はじめ野党においても地域別、全国同一の議論は別として1000円以上の引き上げには異論がなく、将来的には最低賃金1000円の実現は早い時期に達成されるものと思われます。とは言え大企業に比べて体力が乏しい中小・零細企業にとって人件費負担が増大すれば経営の圧迫に直結しかねません。対応策として厚生労働省は経済産業省と連携し、最低賃金引上げにより、影響を受ける中小企業に対し無料相談・支援の整備、各種助成金による支援を行っています。

 

 

 最低賃金引上げについて積極的に主張されている「日本人の勝算」の著者デービッド・アトキンソン氏によれば、生産性の低い企業が淘汰され生産性の高い企業の雇用が増えるそうです。最低賃金1000円以上の引き上げは、昇給ができない企業から生産性が高く昇給に対応できる企業への労働移動が実現します。「働き方改革」では、生産性向上と共に労働移動が改革の方向性として示唆されていますが、このような結果と思われます。近い将来、最低賃金1000円が視界に入ってきますので、企業の高付加価値の創出と生産性向上は喫緊に対応すべき課題になります。

 

 最低賃金引上げや労働問題となると一企業単位で対応できることではないと思われるかもしれません。働き手の採用・確保に苦労がなかった人口増加のパラダイムから働き手が不足するパラダイムの移行、そんな状態で賃金高騰の対応、生産性の向上を急いで考え、その芽を育てていかなければなりません。今までの常識で捉えると最低賃金の上昇に備えて、雇用を減らすことや費用を減らすなどのコスト面で対応しがちですが、生産性向上に向けた企業活動となると今までと全く違った回答が出てくる可能性があります。いろんな打ち手を考え、自社にあった施策・・何よりも現場の社員が持っている能力を最大限に活用することが最善の策です。答えは現場にあります。