
多くの企業で働き方改革が進められ、総労働時間の削減が順調に進んでいる会社がある一方で、抜本的な対策を取らずに管理職の負担が増えたり、サービス残業が発生したり、副作用が出てきている会社も散見されるようです。働き方改革では、日本型人事労務管理から欧米型の仕事基準による企業組織体制への変革が求められています。専門化された昇進コースであったり、個人による意思決定と明示的な管理機構といったアメリカ企業の特性への変革は、集団的な意思決定と人と組織の全面的なかかわりを持つ日本企業にとって、未知の領域といえるではないでしょうか。働き方改革を本気で取り組もうとすると、人と組織の方向性をどうすれば良いのか・・に辿りつきます。
日本型経営の特徴である企業別労働組合と、アメリカのように企業の枠を超え職種別・産業別に組織している労働組合の伝統的な労務管理を比較することはできませんが、能力開発は当面は企業の責任で行うことが必要と思われます。仕事基準の働き方への入り口は、職務分担と人事考課・昇進基準の決定です。質・量の観点から、要員と一人ひとりの分担となる職務を明確に定め、その範囲を職務区分とします。その遂行に必要な資格や要件を明細書に明記し、その職務区分を超えた働き方をすることは善意であっても許されないとするのがアメリカですが、日本人には抵抗があります。アメリカでも、1970年、80年代、労使関係苦難の時代の反省から、人的資源管理の普及や日本型人事労務管理の部分的導入が図られました。

人的資源管理では、取り換え可能な存在として軽るんじてきた労働者を、価値ある資源、貴重な資源として重視しています。同時に、日本型経営の部分的導入としてQCサークル取り入れられましたが、その活動の本質が理解できず失敗に終わったようです。それらの経緯から、隣接するいくつかの作業領域を統合再編したまとまりある仕事と裁量権の付与など、日本の集団的職場編成(チーム制度)へ変貌し、「組織開発」への取り組みが活発化していきました。いつの時代、どこの国でも「ひとと組織の課題」が生まれ、その解決に多くのエネルギーが使われるようです。
人事制度の取り組みで、採用・雇用管理、報酬管理、人材開発、組織開発と多くの領域と仕組みがありますが、最近、思うことはこれらすべて「打ち手」であって、ひとと組織の課題解決を行うことが人事の目的ではないかと・・・。課題解決のために、各領域が、それぞれ別々に問題にあたるのではなく、人事諸機能が連携し、統合、境界を越えて問題解決に当たることが求められる時代ではないかと思います。例えば、「職務分担」の職務明細は、「能力開発」「人事考課・昇格基準」に使えるように別々に取り組む必要はありません、毎日起き、困難さが増している「ひとと組織の課題」の優先順位を決め、可視化して関係者同士の対話、解決策を導く活動が「マネジメント能力開発」であり「組織開発」の実践です。
いろいろな可能性が生まれます。