
新卒者一括採用にこだわってきた日本企業の採用も、先日の経団連の「就活ルール」も廃止発表など、大きな地殻変動が起きようとしています。新卒者採用という募集の仕方はせずに、社会人の中途採用や未経験者、新卒者、現役学生も同じ窓口で通年採用を目指すことになるようですが、従前の採用ルールや慣習が根強く残る日本社会において労働条件や教育訓練、職場環境などの違いをどう作り上げていくのか興味があるところです。そんな中、3月に公表された「若年の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ」(労働政策研究・研修機構)に、今後、中小企業が取り組むべき若年労働者の能力開発と職場定着に関するヒントがみつかりそうです。
調査は2018年4月時点で20~33歳の正社員職歴を持つ5361名を分析対象として行われたものです。それによりますと、既卒者の中で最も離職率の高いのは、卒業から1年以内に就職した人で、新卒者同様の就労経験ながら、経験豊富な転職希望者と同じ土俵に立たざるを得ないことに加えて、入職前の情報と実際の労働条件が異なることが離職要因ではないかと分析しています。また既卒者は、研修等の教育訓練や上司からのコミュニケーションが不足する傾向から、指示があいまいなまま放置された人、初めから先輩と同等の仕事を任された人が多く、このようなことが離職傾向の増加と関連する可能性を指摘しています。

若者の職務遂行能力は、性・学歴・離職の有無に関わらず長く働くほど向上します。勤続期間が短いうちは企業側の期待水準に到達できない若者が離職し、勤続期間が長くなるにつれ、自分の能力可能性の期待が高く、現在の職務遂行能力の高い人がキャリアアップのために離職していきます。勤続3~5年が能力水準の分岐点で、この時点で自社のキャリアアップモデルを提示する必要があります。また、調査時点で正社員に転職している人で、「労働時間・休日・休暇に条件がよくなかったため」離職したとする初めて勤務先の週労働時間の平均は、男性57.2時間、女性で52.5時間でした。現在の勤務先での週平均労働時間は、男性47.0時間、女性42.0時間と大幅に短くなっています。
これらの調査結果からも、「働き方改革」での長時間労働の是正は、すべての企業での命題となりそうです。多くの若者は、家庭生活と仕事の両立を職場選択の要件としていますので、所定労働時間内での勤務が理想です。そのためには、企業が効率的な業務の遂行モデルや人の関係に焦点をあてた組織開発に取り組む必要があります。また、能力開発においても企業は、職務遂行の期待水準を勤続期間別に示す必要があります。期待水準に対するギャップを明らかにして、上司とのコミュニケーションを図ることも能力開発や職場定着に有効です。これからの日本社会では、一企業で定年を迎えるような働き方ではなくなると思いますが、企業の必要とする人材、キャリアパス明らかにするとは大事です。そのためにも「仕事の見える化」から初めてみませんか?