大きく変わる労働時間の考え方

 働き方改革の成立により労働基準法に時間外労働の上限規制が盛り込まれ、経過措置のある一部業種と中小企業を除き今年4月から改正労働基準法への対応が必要になります。貿易摩擦が起きていた1980年代から、日本の長時間労働は問題視されてきましたが、長時間労働を容認する企業文化や職務遂行上の裁量権に少なさや会社に従属せざるを得ない立場、また残業代込みで収入を見込むなどの労使双方にその要因があります。

 

 日本が直面する少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や仕事と家庭生活両立の重要性などイノベーションによる生産性向上とともに、女性や高齢者の就業機会の拡大・環境の整備など持続可能な社会への転換が前提となってきました。そのためには長時間労働の是正に企業が取り組み、健康の確保、ワークライフバランスの確立、男性の家庭参加などが可能となる社会の実現を労使・政府の合意に基づき進める必要があります。労基法32条に定める1日8時間・週40時間の労働時間により近づける労働時間の管理が必要な時代に転換していくことになります。

 

 労基法36条では、使用者と労働者代表が協定を結び労基署に届けることで32条の違法性を免れる免罰的効力が生じます。同様な考え方は米国や韓国など労使合意による時間外労働契約(民事)なので、割増賃金さえ払えば良いというものに近いといえます。ただし、両国の割増賃金率は長時間の残業をさせると会社が不利益となる50%になっています。対照的に欧州諸国では。EU労働時間指令もあり休息日・休息時間の規制が厳格で通常での長時間労働は想定していないようです。フランスでは、勤務間インターバル11時間、勤務間休息1時間とし1日の最長労働時間は12時間、週48時間を限度としています。

 

 今後日本の変化、例えば医療・介護一体改革など社会福祉や医療制度における家族の役割が大きくなってきた時に、現在のような働き方では親族介護または病気療養による離職を余儀なくされる怖れがあります。ワークライフバランスを改善し、家庭における男女の家事分担・育児協力、地域活動の参加を推進するためには長時間労働の是正が前提条件になります。

我が国の労働法制は、労使間合意による労働契約、すなわち残業の容認から労働者の「健康確保」に軸足を移しました。今すぐ時間外労働の改善ができないとしても、本来の限度基準である月45時間、年360時間以内を目指さないと働く人の集まらない会社になる可能性もゼロではなさそうです。