働き方改革とオランダ型アプローチ

 かつては「オランダ病」と揶揄されたほど経済活力の点で問題を抱えたオランダが、パートタイムと常勤雇用の時間当たり賃金と社会保険の差をなくし、一種のワークシェアリングを全国的に行ったことで「オランダの奇跡」と呼ばれるほどの経済復興を成功させました。

 労働時間の短縮・延長を労働者が申請する権利を認めるなど、労働時間の選択の自由度を高めたことが女性の就業率アップに貢献してきたとされています。

 

 かつては日本同様に男女の役割分担や子育てに関してキリスト教的家族観が一般的であったオランダですが、人口構造の変化から女性がキャリアを持ち、男性も親の役割を果たすために社会が変わるべきという危機感が高まっていったようです。1990年以降、短時間勤務でもキャリア形成を可能とする法制度が確立し、現在、女性の多くが週20~32時間の就労をしており、男性のパートタイムも浸透し総就業人口の4割近くに達しています。職務が明確な「ジョブ型」の働き方がパートタイム雇用を促進させ、多様なダブルジョブの働き方が、個人の職業能力向上に相乗的な効果を生んでいます。

 

 

 オランダにおける人材活用アプローチは、労働時間の選択の自由度を高め、希望に沿った形で多くの人が働く参加型社会を目指すものです。オランダにおけるパートタイム労働者は、基本的に収入や雇用契約に不安定さがない常勤雇用契約であり、派遣や有期雇用と違い、日本における正規雇用者にあたります。パートタイム労働を労働市場に正規雇用として踏み入れたことが、「ワークシェアリング」を生み出す結果となりました。結果として世帯所得の上昇・家計消費の増加・経済の活性化・高い経済成長という好循環サイクルが実現しました。

 

 マクロ的な政策は別として企業の人材活用アプローチでは、オランダモデルは参考になります。システムとして取り入れるためには、「ワークシェリング」の妨げになる、「メンバーシップ型」の長期雇用保障や年功昇進・賃金体系など単線型のキャリアパスを変えていく必要があります。職務が明確な「ジョブ型」の働き方に変えることで、「成果に応じた報酬」が実現され女性の不利益も解消され、新しい労働時間制度の導入も容易になります。ダイナミックな能力別人事により、優秀な人材ほど満足度の高い会社になることは間違いありません。