
10月1日から中旬にかけて全国都道府県の最低賃金が改定されます。福島県は10月1日から前年比24円引き上げの時間額772円となり最低賃金が時給で決まるようになった2002年度以降で最高額の引き上げ額となりました。最低賃金に抵触する学生アルバイトなどの賃金については、10月1日以降の時給引き上げは実施されていると思いますが、最低賃金額に抵触しない時給引き上げについて実施の時期等、企業全体の人件費上昇による企業収益が懸念されるだけに、他企業の動向が気になるところです。そんな中、帝国データーバンクでは「最低賃金改定に関する企業の意識調査」(2018年9月実施)を発表しました。
最低賃金の改定を受けて自社の給与体系を「見直した(検討している)」企業は44.0%。「見直していない(検討していない)」は40.0%。前回調査2016年9月時点と比較して「見直した」企業の割合は9.0%増と最低賃金改定が従来より見直すきっかけとなっているようです。今回の最低賃金の引き上げ額について、「妥当」が43.8%が最も多く、「低い」(15.2%)「高い」(13.7%)を大きく上回っています。最低賃金改定に伴い収入増加による消費活性化が期待されるところですが、消費回復効果について「ない」とする企業が54.6%、「ある」とする企業は9.0%にとどまっています。

2018年度の一人当たり賃金の実施状況に関する問いでは、「定期昇給」で賃上げした企業が62.2%と最も高く(複数回答、以下同)。次いで「賞与(一時金)」(36.4%)「ベースアップ」(33.4%)と続き、3社に1社がボーナスやベアにより賃上げを実施しています。「各種手当の増額・新設」が11.1%、創立記念日等の祝い金や通勤定期券の現物支給を含む「その他の賃金の増額」が2.7%と、何らかの形で引き上げを実施した企業は83.1%にのぼりました。
今回の最低賃金改定を受けて4割を超える企業が給与体系の見直しを実施(検討)しており、人件費の上昇などコスト負担の高まりがある中で8割以上が賃上げを実施し、引き上げ額を妥当とする企業も多いようです。しかし、給与体系の見直しに関しては今年6月の最高裁判決(ハマキョウレックス事件)にみられるように正規・非正規の賃金格差の解消(均衡待遇)に向けた新たな判断もあり、一概に手当の見直しが最善策とは言えない現実があります。「働き方改革」の大きなテーマである「同一労働同一賃金」(雇用形態に関らない公正な待遇確保)の施行に向けた関連法案改正を見据えた賃金制度の在り方についての議論が必要です。