労働経済の分析から見えてくる人材育成

  厚生労働省は、9月28日、「働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」と題する2018年版「労働経済分析」(労働経済白書

を公表しました。働き方の多様化に対応した能力開発や雇用管理の在り方について、さまざまな視点から多面的に分析を行っています。

 雇用情勢の概況は、2017年度の完全失業率2.7%と24年ぶりの低水準となり、有効求人倍率は1.54倍と44年ぶりの高水準にあり、雇用人員判断DIによる2018年3月調査では、全産業・製造業・非製造業のいずれもバブル期に次ぐ人手不足感となっています。

 一般労働者の名目賃金は5年連続、パートタイム労働者の時給は7年連続、増加しています。一般労働者の賃金(平均値)に着目すると、女性・高齢者の労動参加比率の上昇は、全体の賃金水準(平均値)に対してマイナスに寄与しています。

 

 労働生産性の上昇率の低下は、国家的な課題となっていますがIT資本などの投資に加えて、人への投資促進の重要性を訴えています。日本のGDPに占める企業の能力開発費の割合は米国・フランス・ドイツ等先進諸国と比較しても低下傾向にあり、労働者の人的資源が十分に蓄積されない懸念があります。他方、人手不足感が強い企業・業種を中心に人材育成を重視する動きもあり、今後も一層推進されることが見込まれています。製造業や情報通信業などでは、大企業の能力開発費が高いことで企業規模間の格差が生じています。小売業、宿泊・飲食サービス業では、大企業の能力開発費が低く、中小企業の方が高いことが特徴的ですが、全産業でみると能力開発費は大幅に低い水準にあります。

 

 

 企業の労働生産性の向上を実現させるためには「人への投資」を、働き方や企業を取り巻く環境変化に順応して、企業の競争力向上や効果的な人材育成に取り組んでいく必要があります。能力開発と労使のパフォーマンスの分析では、OFF-JTや自己啓発への費用支出は、翌年度の労働生産性を向上させる効果が高いとする企業が多いようです。能力開に積極的な企業では、仕事に対するモチベーションが上昇している労働者が多い結果になっています。OJTの取り組み個数が相対的に多い企業では、「OJTがうまくいっており、職場の生産性が向上している」と認識している企業が多いようです。

 

 OJTでは、段階的に高度な仕事を割り振ること、仕事に関する相談に乗ったり助言すること、仕事の幅を広げるなどの取り組みが職場の生産性向上等につながる可能性が高いとしています。多様な人材の能力が十分に発揮されている企業の取り組みとして、指導役・相談役の配置、本人負担の社外教育に関する支援、企業の人材育成方針・計画の作成などごくごく基本的な施策等が功を奏しているようです。中小企業では、OFFーJTの実施率が5割程度、自己啓発支援も25%程度と大企業に比べて30ポイントほど低いようですが、近年の若者は仕事に関して自己成長意欲が高いので能力開発の施策で生産性の向上を目指すのも良いと思います。