
自民党総裁選も終わり、「働き方改革」を日本経済再生に向けたチャレンジと位置づける国の動きはさらに活発になると思われます。政府ではこの改革は、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本人の働き方に対する考え方に手をつける大改革としていますが、正に戦後初めての労働法制の大改革であり、定年延長も視野に、老齢年金受給年齢の変更や社会保障制度の変更も考えられるかもしれません。改革を進めるにあたって、少子高齢化、働き手の現象という人口構造の問題に加えて労働生産性の減少、革新的技術への投資不足など日本のイノベーション欠如が問題視されています。
65歳までの生産年齢人口の減少と社会保障問題、企業の収益率向上をなど課題解決には、在職年数の応じて昇給する仕組みから、仕事を基準とした同一労働同一賃金を基盤とした欧米型の賃金制度を導入する必要があります。これは戦後日本の賃金体系の仕組みを大きく変えることなので、働く人だけではなく経営者にも抵抗があるかもしれませんが、正規・非正規労働に対する格差是正、厚生年金の加入拡大などにより、育児・介護など働く人のライフスタイルに合った就業形態の選択が可能になります。中小企業の継続的な人材確保のためには大事なことです。
しかし、欧米の賃金制度の考え方を、そのまま日本に取り入れることには無理がありますし、企業においても慎重に分析・立案の必要があります。

イノベーションとは、「既存の資源から得られる富の創出能力を増大させるもの」とドラッカーは定義しています。働き方改革とイノベーションの関係性を考えるに、一般的に言われる「ヒト、モノ、カネ」の経営資源でもっとも価値を生み出す「ヒト」に焦点をあて、人材活用の方法を見つけてより高い経済的価値を与えることにほかなりません。日本は開国から明治、大正に至る時代の中で、日本的であり続けようとして、学校・行政・労組のような公的機関の発展、いわゆる社会的イノベーションに集中し、技術的なイノベーションは模倣・輸入・応用する決断をして成功しています。ドラッカーも高く評価するとことです。イノベーションとは、技術というより経済や社会に関わる用語とも言っています。
働き方改革の影響として正規・非正規という現在の考え方から、通常時間働く人とそれ以外の働き方を選択する人(多様性)に変わってきます。職務限定・時間限定・地域限定・フリーランス・テレワーク・様々な働き方を選択できる施策が労働力人口の不足を補ってくれる、また職業人としての自立性を確保するために厚生年金の適用拡大は避けられません。欧米との違い職業教育に関しては改革の中で、女性のリカレント教育、学び直し支援を上げています。企業においてもイノベーションの必要性は高まっていますが、従業員の意識変化には時間がかかりますので、時間短縮に向けた業務改善や組織開発の取り組みなど、効果が実感・納得できるものから進めてはいかがでしょう。