介護離職の対策と企業防衛

 家族で介護が必要になったとき、従来は女性が大きな役割を果たしてきました。しかし、現在では、未婚化や晩婚化、核家族化、女性の社会進出などにより、女性・男性問わずに介護の担い手になる時代です。4人に1人が仕事をしながら介護を担う時代を迎え、私の顧問先・関与先でも社員の介護に関する相談が増え、多くの会社で他人事ではなくなってきています。株式会社インテージリサーチでは、2017年3月に「介護離職に関する自主企画調査」を実施し、2018年追加レポートを公開していますので、この調査結果を参考に企業の対策について考えていきたいと思います。

 

 35~59歳に被雇用者のうち、介護保険制度を利用中・利用はしていないが制度概要を「理解している」と答えた人が4割、名称を知る程度、または全く「知らない」と答えた人が3割と介護保険制度の理解が国民に十分普及していない結果になりました。また、「仕事と介護の両立」を支援する会社の制度は、「介護休業制度」「短時間勤務制度」「フレックスタイム制度」「在宅勤務制度」などの導入がなされている企業がある一方で、6割以上の人の会社などで「ない」との結果となり、制度の導入の遅れが目立つ結果となっています。また、雇用形態別では、非正規社員が正規社員に比べて支援制度を利用できないなどの課題も残す結果になっています。

 

 

 日本人の寿命は延び続け90歳に手が届こうとしていますが、一方で自立した生活を送れる期間(健康寿命)が、平均寿命より男性で9年間、女性で12年間短いことが分かっています。経験を積んだ熟練従業員や管理職の親世代が支援や介護を必要とする年齢と重なります。企業の中核となる人材が仕事と介護の両立に悩み離職してしまうことは、企業にとっての損失です。継続的に介護を行うためにも経済的基盤は重要ですし、介護の直面しても仕事が続けられる、また、従業員が心身ともにストレスを抱える前に企業として支援の取り組みを始めることが大事です。

 

 公的介護保険のサービスを受けるためには、要介護認定の申請を始めることが最初の手続きですが、家族に認知症の兆候が見られた段階でケアマネジャー等に相談することなど、介護保険制度全般の知識を周知する社内体制が重要です。知識や社内の相談窓口などがあれば、対象家族の重症化以前に、また本人が一人抱え込んでディストレスにならないよう「お互いさま」の精神を会社内で醸成できると思います。前述のとおり長い介護の期間が続きますので、雇用保険の介護休業制度と短時間勤務や在宅勤務など実情にあった企業の制度をつくることも大事です。「働き方改革」の推進に合わせて「賃金制度」の見直しも必要かと思われます。人材不足がより深刻になる将来に向けて貴重な社内人材の確保は、企業経営を左右する命題ではないでしょうか。