企業の「学び直し」の実態と意識について

 我が国では、労働力人口の減少や技術革新の進展など社会環境の変化により、雇用や人材育成などの社会政策の変化のみではなく個人の就労意識の変革も求められています。そのような環境の中、第一生命ホールディングス(株)のシンクタンク(株)第一生命経済研究所では、2000人を対象とした「人生100年時代の働き方に関するアンケート調査」を実施し、民間企業で正社員で働く男女の職業能力開発(学び直し)の実施状況について分析を行っています。

 学び直しを「現在、行っている」11.3%、「現在は行っていないが、過去に行っていた」14.6%となり学び直し経験者は4人の1人という結果になりました。

 

 「これまで行ったことがないが、将来に行おうと思っている」という実施希望者が24.7%いる反面、「行うつもりがない」(46.6%)と回答した人が約半数に上ります。それでは学び直しに消極的な層の就業意識の質問では、「自分はどのような仕事がしたいかわかっている」「仕事を通じて自分を高めたい」とする回答が男女とも約半数と、学び直しを実施している層との差は、10~30ポイントと大きな差がありませんでした。

 大きな差が出たのは「長く働き続けるためには学び直しが必要である」「長く畑r機続けるために、学び直しをしたい」の質問では、学び直し経験者は7割以上、学び直しを行うつもりがない人は3割が回答しています。

 

 将来的に学び直しを考えている人たちが、学び直しをしていない理由について、「学ぶために時間がない」(47.9%)、「学ぶために費用がない」40.3%と時間や費用といった物理的な障壁が多くを占めていました。

 学び直しをおこなうつもりがない人の理由として「自分には関係ない」(33.3%)、「学ぶために時間がない」(28.5%)「学ぶため費用がない」(24.5%)「まなぶことに関心がわかない」(15.3%)と学ぶ必要性も関心もないことを理由として人が少なくないようです。

 

 「働き方改革」でも女性のリカレント教育や学び直しの支援などの長期的な施策などが掲げられていますが、学び直しを考えていない人が学び直しをするために企業に期待することの質問が興味深い結果になっています。

 学び直し経験者、将来行いたい人が会社に期待することは「職業能力に関する情報提供」ですが、行うつもりのない人は「職業能力開発の成果に応じて昇給・昇格の処遇に反映してほしい」という結果になっています。

 企業として社員に求めるキャリアやそのために必要な職業能力を示し学び直しの重要性を伝えることが重要ですが、長期勤続の人基準で評価してきた昇給・昇格も、学んだ成果を人事処遇に反映させるインセンティブも制度として取り入れる必要がありそうです。