
中小企業基本法では、資本金および常時使用している従業員数によって中小企業の定義していますが、一般的には従業員300人以下の企業を言うようです。その中小企業の大半を占めるのが従業員数20名未満の「スモール・ビジネス」と呼ばれる企業群です。日本の就業者数の中で相当な比重をしめる企業群ですが、能力開発やキャリア形成の実態や働き方に着目した調査・研究、大企業との比較・課題を明らかにしたものが少ないのが現状です。昨年、JILPTにおいてアンケート調査の結果より課題と可能性についての報告がされています。
スモール・ビジネス20人未満の企業数の推移は1999年から15年間で102万社が減少し、そのほとんどが10人未満の企業(97%)というのが実態です。同様に有業者指数の推移では、全就業者数は2012年以前20年間で2%の減少ですが、従業員10人未満では30%の減少です。スモールビジネスの大半を占める従業員10人未満の企業セクターでは50歳以上の有業者の比率が6割に達し、20年前の日本の産業社会における経営者・従業員のモチベーションの高さから「活力ある多数派」と呼ばれた過去から大きく変わったようです。それは、スモール・ビジネスの人材育成・能力開発の取り組みにも現れています。

日常業務のなかで仕事を効果的に覚えてもらう取り組みとして、スモール・ビジネスでは、「とにかく実践・経験させる」「仕事のやり方を見せる」など5施策の実施と現在の仕事をやれることを重視しています。考え方の違いで従業員数の多い企業は企業規模の比例して、「会社の方針や創業者の考えを理解させる」「業務に関するマニュアルを配布している」「目指すべき仕事や役割を示している」など、実施する施策も増え、自己啓発の支援など従業員の育成・能力開発に課題を感じているようです。将来を見据えた社会・経済変化に対応できる管理・監督者の育成に注力しているのが窺えます。
それに対してスモール・ビジネス群では、中高齢者の中途入社などの比率が高いことも影響してか、求めるキャリアや管理・監督者としての役割期待も薄いために将来を見据えた能力開発の意欲は低いようです。報告では、現状から明るい未来像を描くことが難しく、高齢化の進展と共に衰退していく多数派との見解も示唆しています。私は、今までの企業活動で培ってきた知財(地域性や時間の経過と共に蓄積された技術や知識)を失うのはもったいないと思います。報告でも指摘する「明るい未来像」は、経営活動・実績と能力開発、キャリア形成とに間に好循環サイクル生まれる状況と新陳代謝を通じて次世代につなぐ活動が重要になります。その力はあると私は感じています。