イノベーションを生む人材育成と組織

 日本の経済社会の現状は、少子高齢や労働者の不足などの人口問題という構造的課題に加え、イノベーション欠如による生産性向上の低迷、革新技術への投資不足の問題を抱えています。よく経済の指標として、OECD(経済開発協力機構)の統計が使われますが、OECD諸国の中でも日本の労働生産性は低いほうにあり、起業家の開業率の低さも指摘されるところです。政府もフリーランス(個人起業家)の開業などの力を入れているところですが、企業にとってもイノベーション人材の育成は急務と考えます。

 

 イノベーションというと「今までにない斬新な商品や使いたくなるサービス」など新しい価値を創造することと解釈されがちです。一般的に「技術革新」と理解されるようですが、ドラッカーはそれだけではなく、人的・物的、社会的資源に対して、新しいより多くの富を生み出す能力を与える仕事と定義しました。短期的な事業の成果をもたらすマーケティング(市場開発)と長期的な成果を生み出すイノベーション(革新)の人材の育成と推進組織の構築の両輪を操ることがマネジメントであり企業の目的(機能)ではないでしょうか。

 

 管理職研修でのグループワーク、ワークショップを行って気づくことですが、一つのテーマ(課題)を、5~6人の参加者に背景と要因、解決方法などを話し合ってもらうと多様な意見が飛び出します。課題の対する周辺のワードや観点に着眼して、一般論から外れた不確実性の高い解決方法や奇抜な意見が話し合われます。最初から具体的な解決法を話し合う単純な構造とはせず、全体を俯瞰(直観力)し、論理的に方法論を見つけていくことを学びます。

 

 課題に対して、テーマの全体観をつかんで抽象と具体を行き来しながら解決策を模索することができる人が、私はイノベーション人材と考えています。最初から今までにない斬新な商品や価値を生み出すことは容易ではありません。創造性と協調性をもって他者と協力しながら、幅広いコミュニケーションの出来る人材を育て、イノベーションを推進する適切なマネジメント体制を整備することができた企業がこれから生き残れる企業だと思います。イノベーションの機会をもたらす7つの源泉の一つ「人口構成の変化」・・「少ない社員で大きな成果を生み出すのはどうしたらよいか?」この解決策こそイノベーションの実践ですね。