
帝国データバンクは11月15日、「事業承継に関する企業の意識調査(2017年)」を発表しました。事業承継への考え方について、「経営上の問題のひとつと認識している」57.5%、「最優先の経営上の問題と認識している」13.6%と合わせ、71.1%の企業が事業承継を経営上の問題として認識しているようです。事業承継を円滑に行うために必要なことでは、「現代表(社長)と後継候補者との意識の共有」が60.4%で最高になりました。具体的な企業の意見として、自社の強み・弱み・課題などの適正な理解や将来像などの議論を通して、それぞれの立場での行動と着実に承継を進めることが重要としています。
調査では企業の4割超が事業承継の計画があるものの、具体的に進めている企業は22.9%になりました。中小企業庁では、7月に今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間とする「事業継承5ヶ年計画」を策定しました。昨年12月には、中小企業・小規模事業者の円滑な事業承継を実現するための指針である「事業承継ガイドライン」を10年ぶりに改訂しています。事業継承に関しては、自社株式の集中化などの経営権の分散防止対策や税金負担対策などの課題も多くありますが、ここでは後継者に対する教育や育成にスポットをあてたいと思います。

事業後継者に対する教育や育成計画といえば、社内で多くの部門において、多くの実務経験を積んでつみ、責任ある地位につけて自覚を促したり、経営理念の承継のために現経営者が自らの指導に当たるなどがあると思います。加えて近年、経営者に求められる資質として、企業のあるべき姿(ビジョン)を掲げられること、またそれを社員に伝えられるコミュニケーション力の充実、ビジョンを浸透させ、共感させ、共通の目的を持たせる人間的な魅力も必要になります。また変化の激しい時代だからこそ自らを変革する勇気、個人の能力集合体である組織に変えていく能力などがあります。
これらは自らが、ある程度の人事・労務の管理に関する学びも事業経営者として必要なことを示唆していると思います。「働き方改革」は、本来のジョブ型から流れは変わってきましたが、ジョブ型のキャリア開発や教育訓練の制度構築や労働規制の状況を見据えた、雇用分野のイノベーションの取り組みは必要です。欧米では人事の専門家を育成するヒューマンリソース学部が高等教育の場では多く存在し、卒業生は人事関連の専門職につくそうです。日本では、そのような学部はありませんが、中小企業の事業後継者がそのような勉強をすることは、企業の発展のため必要ではないかと思います。