「介護離職ゼロ」と介護休業法

画像;介護離職ゼロの理解調査結果

 政府が掲げる「介護離職ゼロ」は、多くの国民にあまり浸透していないとする調査結果を、有料老人ホームなどを運営するオリックス・リビングが発表しました。「介護離職ゼロ」の意味を尋ねた質問では、本来の意味である「仕事と介護の両立が出来ず、介護のため離職する人をなくす政策」と回答した人が43.9%でした。「介護職員の離職を防いで、介護業界の人手不足を解消するための政策」21.8%、「わからない」34.9%と意味を理解していない人が半数を超えました。

 

 日本は本格的な高齢化社会を迎え、高齢者人口の増加は家族の介護問題の抱える労働者の仕事と介護の両立、職業生活上の大きな課題と言えます。育児・介護休業法では、同一対象家族について複数回の介護休業制度利用が可能ですが、現実には介護休業を取らずに有給休暇で対応することが多く、育児休業のように企業内や社会の理解も不足しているようです。オリックス・リビングの調査でも「聞いたことがあるが内容まではわからない」49.2%、「知らない」29.2%となんと8割近い人が制度の内容を知らなかったようです。

 

 

画像;仕事・介護の両立に関する調査結果

 就業している人に対して、家族を介護する必要が生じた場合の「仕事」と「介護」の両立を尋ねたところ、「できると思う」と回答した人は8.6%でした。介護休業制度の利用率は育児休業と比べても3%程度と低いのは、育児休業は若い女性社員が主ですが介護休業の取得者は40~50代の働き盛りの男性管理職が多く、長期の休みを取ることに躊躇する気持ちもわかります。複数回の休業の取得が可能であっても、職場全体のことを考えて休みを取りずらいですね。

 

 貴重な人材を離職させずに「仕事」と「介護」の両立を可能とするには企業のサポートが必要です。調査からも「介護休業制度」を知らない人が多いのですから、「仕事」と「介護」は両立支援制度の基本方針を明確にして、制度の概要についての研修や周知、支援を要する社員への相談の窓口など体制の構築が必要ではないでしょうか。なるべく早い段階で、ケア・マネージャーなどの介護専門職への相談が可能な体制も必要です。相談窓口には、私たち社会保険労務士などの育児・介護休業法の専門家も適任かと思います。