企業の生産性向上とイノベーション・雇用との関係

画像;露に光るシダ類の葉

 厚生労働省は9月29日、「イノベーションの促進とワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題」と題する2017年(平成29年)版「労働経済の分析」(労働経済白書)を公表しました。少子高齢化による労働力供給制約の解消や労働生産性の向上に向け、IoT、AIなどのイノベーションの進展への対応や、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組などについて分析を行っています。イノベーションというワードは頻繁に使われるようになってきていますが、「革新」「一新」とい意味を持ち、これまでの常識が変わるほどの社会に大きな影響を及ぼす技術革新や新たな概念を指します。

「イノベーション」は、最近では、サービスやマーケティングなどの分野にも広がり、「新機軸のサービス」や「新たな価値観の提案」という意味でも使われるようになりました。日本の経済成長の現状は、先進主要国と比べてもGDP0%台と低い水準にとどまり、資本や労働などの要因以外の成長要因(イノベーションなど)の寄与度が低いことが指摘されています。企業においては研究開発の促進、先進的機械の導入などが成長要因と考えているようですが、現実は「能力ある従業員の不足」「目先の売上・利益の追求」「技術力・ノウハウの限界」などが阻害要因なっているようです。

 

 日本の企業では長期にわたる設備投資の低迷が設備年齢を上昇させ、古い機械・設備が生産性の低下、競争力の衰退を招いているといわれています。製品開発や研究開発への投資が少ないことがイノベーションが進まない要因とする報告がされ、また、専門知識や研究内容を考慮した採用が行われていない現状と高度な能力を持つ人材の教育訓練の促進が課題としています。「高度プロフェッショナル制度」がこの要請に応える人事評価・裁量労働制として「働き方改革」の一つに位置付けていますが、長時間労働にならないよう適切な労務管理の取り組みが必要です。欧米のように「仕事」に「人」を配置する考え方がないので、労使ともに工夫が必要と思います。

 

 就業者の傾向としてサービス業化の進展に伴い、事務従事者や専門的技術的従事者の占める割合が増えているのと非正規労働者の増加が低スキル職種の増加を促進して高スキル就業者との二極化を拡大しています。今後AIの進展が雇用に与える影響として、現時点では既存の業務効率や労働の省力化など労働生産性の向上の期待が大きいですが、今後は価値創出や新たな業務創出などAiの基礎知識と可能性の理解、使いこなす人材を育成する必要があります。同時に、販売、サービス、福祉などのAIが代替できない人間的な付加価値を求められる業種では、「コミュニケーション能力」を高める教育訓練が必要になります。将来、どのような会社にしてどのような人材を確保し・育成していくかを考える時代だと思います。2020年に向けて自動運転自動車を完成を目指す会社もありますので、遠い未来の話ではない気がします。