
建設業と運送業の「働き方改革」に関する政府の関係省庁連絡会議は8月28日、長時間労働の是正に向けた指針を策定しました。建設業者の週休2日確保を明記したほか、運送業者には違法な長時間労働を行った場合の行政処分強化を盛り込んでいます。建設業と運送業は他の業種に比べ、労働時間が長く人手不足が深刻化しています。長時間労働是正に向けて、今後発注される工事について、週休2日の確保や悪天候を考慮した工期の設定などを盛り込んだ指針を決定しました。
週休2日制は、1997年当時の建設省で、週所定労働時間40時間の設定に対応した適正な積算の実施、4週8休の工期設定、悪天候による作業不能日数の特記仕様書条件明示の議論がされ、文書化されています。しかし、その後の急激な建設投資の縮小や団塊世代の大量離職、採算悪化に伴うリストラを断行、受注競争激化を背景に土日返上の稼働を余儀なくされました。2014年、中期的担い手確保に向けた「建設産業活性化会議」において、4週8休の休暇がとれる工期設定が6つの施策の一つのして掲げれました。建設技能労働者の高齢化や若年者の人材確保、育成を進める上では就業環境の整備は必須です。

今年、政府がまとめた働き方改革の実行計画では、残業の上限規制を「月最長100時間未満」などとしていますが、建設業は運送業や医師とともに適用が5年間猶予されています。このため、政府は官界、猶予期間に向けた対策を指針としてまとめる形をとったようです。ただ指針に強制力はなくこれから発注する工事が指針の対象となります。公共工事の発注者になる省庁や、不動産会社や建設会社などが加入する業界団体に指針遵守を促すとしています。ただ、違反しても罰則はなく、すでに発注した工事は対象外です。問題は残しますが今後の企業経営を考えれば取り組むべき課題です。
社会保険等未加入問題や建設業の女性・若者の入職促進に向けた取り組みが、今年から業界をあげて加速しています。長時間労働等の就業環境に加え、建設技能者のキャリアパスが見えづらく、若者が将来に希望が持てず入職しないと実態もあります。企業では、入社した若年者へ業種ごとの資格取得、取得の目標年齢と昇格・昇給の人材要件等を見える化することで、キャリアパスの展望と将来の希望につながります。一挙に整備せずに業界の動向を見ながら、できることから取り組むことが企業の中長期経営に繫がります。