「働き方改革」が問う企業の再構築

画像;都市のビジネスビル群

 現政権は、「1億総活躍社会の実現」をスローガンとして、「働き方改革」を横断的課題として位置づけ、今年3月に「働き方改革実行計画」が公表されました。過去20年間、日本の雇用社会は、様々な問題を抱え非正規雇用比率の上昇が、企業を取り巻く内外環境の激化、事業変化スピードの加速と相まって、正社員を中心に長時間労働による過労被害、労働の質・量を悪化させることになりました。「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金の実現」は、本来、「労使自治の原則」が尊重されるべき課題ですが、政府が主導する歴史的各種大改革に、国民の反対の声が聞こえないことも取り組みが正当化されるべき理由となっているようです。

 

 「長時間労働の是正」について、「罰則付き時間外労働の上限規制」の導入は評価されるべき施策です。その一方で、日本の雇用慣行や商慣行は長時間労働を前提としていますので、単純に法律の押し付けでは、OJTを中心とした人材育成がなおざりになり、企業業績の悪化や規制対象外の管理職の労働強化(残業増加)が増えかねません。また、「同一賃金同一労働の実現」も非正規労働者の処遇改善に係る課題解決に向けた有効な施策として評価できることです。単純に欧州モデルの「仕事基準」の報酬決定のモデルを「人基準」とする日本へそのまま持ってくるのは無理があります。政府判断では実情を考慮して「人基準」の存続を許容していますが、待遇差に関する説明義務が企業にあることは注意すべき問題です。

 

 

 

画像;横断歩道を渡る人々

 様々な問題を含みながらの政府主導の「働き方改革」ではありますが、政府の問題提起は正論であり、人口減少、高齢化という経済社会基盤の激変を考慮すれば、対応を遅らせしっぺ返しを受けるのは、企業とそこに働く従業員ということになります。今後の労働力減少局面では、産業基盤の中心となるコア労働力として考えられてきた25~55歳男性は、2030年まで徐々に減り続け労働力シェアでは約3割を占める見通しになっています。従来型のコア労働力に頼る無限定な働き方に多くを依存する企業の在り方が成立しない時代となっています。

 

 老若男女がそれぞれ能力を十分発揮できる職場環境の整備が必要であり、それには、男女で家事や子育てをシェアし、体力の衰えたシニアでも基幹業務に就けられるように、残業を減らし、多様な働き方が公平に処遇されることが不可欠の条件になります。政府主導の改革で懸念される問題は、施策の受動的立場の考え方を捨て、新たな労使自治を構築して、あくまでも企業主導の主体的な改革に道筋を拓くことに見いだされるべきものと思います。そのための協調的な労使関係は不可欠であり、「働き方改革」を企業再構築の機会と捉えて、労使一体となって取り組むことを求められる時代ではないでしょうか。