
日本を代表するリゾートホテルチェーンとなった星野リゾートの経営に関する記事を最近目にすることができました。いろいろな雑誌に特集記事として、星野佳路社長のコメントが載っていることは知っていましたが、興味をもって見ることはなかったような気がします。土地や建物などの不動産を所有せずに、運営を専門としている企業ですので、地方の宿泊業の真似できない経営戦略だと思っていました。
ホテル業界の最大の問題は、朝と昼に仕事が集中して昼間は手待ち時間となる中抜けシフトが常態化していることです。ところが星野リゾートでは、スタッフがホテル内のすべての技能を身につけ一人4役「マルチタスク化(多能工化)」することで中抜けシフトの解消ができ、生産性、収益の向上につながるということでした。また星野リゾートの優れた戦略として、魅力ある組織つくりにコンセプトを重視して、マーケティング、投資、浸透にプロセスに5年の歳月をかけていることです。

組織も、各施設の総支配人、機能部門の長であるユニット・ディレクター、プレーヤの3階層のフラットな運営を行っています。しかもユニット・ディレクターは誰でもチャンスがある立候補制で、毎年100名くらいが手を挙げて、プレゼン、アンケートや意見をまとめ決定する仕組みです。社員の自立性を尊ぶ星野リゾートの社風ですが、すべての戦略は「顧客満足度と利益の両立」を達成目標としているそうです。
ベンチマークとしてるのホテルチェーンの一つが、リッツカールトンということですので、戦略的に相通じるものがあるのかもしれません。不動産を保有する地方の宿泊業でも、人材活用の仕組みや顧客満足と利益の両立の仕組みはできると思います。但し、「マルチタスク」を採用するには、職務分析が必要ですし、「顧客満足と利益の両立」には、ES(従業員満足)を重視した職場環境の整備が必要です。ある程度の手間と時間をかければ人材の確保、能力向上、生産性向上のつながる経営が可能だと感じました。