
昨年12月27日に東京商工リサーチが発表した「介護離職」に関するアンケート調査(有効回答数7391社)で、過去1年に介護離職者が724社(構成比9.8%)で、発生していたことが分かりました。政府は、親族の介護を理由とした離職、転職などを「介護離職0」を掲げていますが、調査では将来的に介護離職が増えると考えている企業は約7割に上りました。仕事と家庭の両立支援の取り組みは、72.4%が不十分と認識しており、日本の生産年齢人口の減少が予測以上に進む中で働き手をいかに確保するかが課題になりそうです。
アンケートで介護離職があると答えた企業で、過去の1年間の介護離職者の人数を尋ねたところ、最多は1名で約7割でした。「6名以上」は、資本金1億以上で2社(1.3%)、同1億未満で6社(1.5%)、有職者数別でみると介護離職は中小企業ほど深刻な状況にあると分析しています。7割の企業で今後介護離職が増えると回答としていますが、理由については「従業員の高齢化に伴い家族も高齢化しているため」(80.6%)、「現在の介護休業や介護休暇制度だけでは働きながらの介護に限界があるため」(57.1%)、「公的な介護サービス縮小による従業員の介護負担増加」(34.0%)などが挙がっています。

2015年8月に介護サービス利用の自己負担の割合が一部の人が2割に引き上げられたり、介護給付費の増加に伴い、介護保険料の負担増も続いています。今後、国として社会保障費の抑制と介護サービスの質と量の確保というジレンマの中でのかじ取りが、企業の介護離職を左右することになりそうです。企業の取り組みとして最も多いのが「就業規則や介護休業・休暇利用マニュアルの明文化」でした。その他、「介護休業・休暇制度の周知」、「介護に関する悩みなどを相談できる体制」などが挙がっています。企業としてできることも限られると思いますが、勤務体制、テレワークなど働き方を変えていくことも重要です。
政府は、やりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる仕事と生活が調和(WLB)した社会を目指しています。平均寿命と健康寿命の差は、概ね男性約9年間、女性約12年間というデーターがありますが、この差こそが日常生活において親が誰かの支援(介護)が必要となる時期です。自己の将来のキャリアデザインを描くうえで、この時期の親の介護も想定して、早い時期から経営側と相談し、対策を立てていくのが最善の道かもしれません。