限定正社員の活用

 勤務地や職種、労働時間などを限定した正規の社員を「限定正社員」といいます。労働契約法改正に伴い、非正規社員から正規に切り替えの受け皿として導入された経緯がありますが、企業にとっては優秀な人材の囲い込み、利益の最大化へつなげるメリットがあります。この度、労働政策研究開発・研修機構より「正規・非正規の多様な働き方に関する調査研究」の一環として、過去の3つのアンケート調査の二次分析の報告が出されました。

 

 具体的には、正社員転換の推進、正社員の労働負荷の抑制、限定正社員制度の普及の3つの政策課題について調査、報告がなされていますが、この中で「限定正社員制度」の論点について整理、検討したいと思います。活用・就業実態について調査では、仕事の定型性や労働時間、賃金に関して賃金・仕事内容・能力開発では無限定社員の満足度が高いが、労働時間では限定社員の満足度が高い結果になっています。仕事に関する満足度では、非正規から正社員転換された者の賃金・労働時間・仕事内容・能力開発機会に対する満足度が、限定正社員として採用された者と比して高い傾向にあります。

 

 

 大きな関心事ですが、企業における限定正社員の存在、導入がもたらす周辺労働力再編の意味、基幹労働力の働き方の多様化の意味については職種によって大きく異なっていたようです。「事務職」「生産・技能職」では、管理職へのキャリアパスが伸びずに、周辺労働力の再編の側面が強かったようです。「営業職」の場合は、キャリアパスが伸び、基幹労働力の働き方の多様化の側面が強くでたようです。「接客・サービス職」は、非正規から管理職の移動が連続的に可能な状況にあり、その中間地点の働き方としての導入されているようです。

 

 正社員と非正規雇用労働者の働き方に二極化解消に関しては、処遇格差の是正が重要な政策課題として位置づけられていますが、限定正社員制度の存在、導入について企業内での人材活用について議論すべき問題かと思われます。企業内での労働者のキャリアに与える影響を明らかにするのには、「限定正社員」の形式的な特徴にとらわれず、今後、正社員の労働負荷軽減が職務レベルの高い労働者を増加させ、それに伴い限定正社員の基幹労働力の多様性を押し上げ、広げる可能性が大きくなると思われます。企業とって人材ポートフォリオに基づく人材活用の仕組み作りが重要になります。