
今年労働者派遣法の大幅な改正が行われました。派遣労働について大橋教授(一橋大学)の論説を目にすることが出来ましたので記事にしたいと思います。今回の改正のポイントとして、派遣労働者のキャリアアップと雇用安定化に向けて計画的な教育訓練の義務化、派遣元の無期雇用の義務化、派遣先への直接雇用依頼など雇用安定のための措置に関する派遣元の責任、大きな改正として派遣期間制限のない「専門26業務」の廃止と同一派遣先への上限を3年にすることなどが挙げられるかと思います。これらの関して、野党、労組、マスコミなどから多くの批判があることも広く知られていることと思います。
登録型が多い派遣労働のように非正規労働者を議論するときにしばしば登場するのが人材のポートフォリオです。これは企業の業務内容に応じて雇用形態の区分、異なった形態の労働者をどのように活用するのが有効かを分析するものです。本来、派遣労働は常用代替を避けるために「専門26業務」に代表されるような高度な専門知識と能力と相互的能力{コミュニケーション能力・交渉力等)あるいは分析的能力(概念化力・課題発見能力)の業務で構成されていました。時代の変遷とともに業務内容が自由化され定型手仕事などに派遣される労働者が増大し低賃金や派遣切りなどの社会問題化してきました。

新卒で正社員になれなかったり、早々に離職して派遣労働に就いた場合、いかにしてキャリアアップするかが問題になってきます。高度な専門知識や能力等を必要とする業務に就くには、高等教育機関や専門学校で高度な知識を学んだ上で資格をとったり、または優秀な専門家集団による良質なOJTの場に恵まれなければ難しいと言わざるをえません。今回の派遣労働法改正により一般登録型より特定派遣型のシフト転換も予想され、キャリアアップを目指す労働者の雇用の安定と職能別研修の機会を得ることに期待したいと思います。
近年、契約社員やパートなど増加する一方で派遣社員は減少し雇用者に占める比率は2%程度と言われています。派遣先にとっても派遣元へのマージンを考えると決して賃金の節約とは言えず、育児・介護の代替として弾力的に活用するのは有効な手段かもしれません。今後、企業は人材のポートフォリオによる経営戦略上の望ましい雇用形態、雇用関係、人事管理の議論、本来の高度な業務を担当する派遣労働が増大するのであれば望ましい姿ではないでしょうか
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