
「アントレプレナー・シップ」・・聞きなれない言葉かもしれませんが、日本語では「起業家精神」と訳されることが多いようです。世界の研究者の中でも、「アントレプレナー・シップ」の統一的な定義は確立されていませんが、思い浮かぶのはアップルの創始者スティーブ・ジョブスや日本では松下幸之助などのカリスマ的な企業家ではないでしょうか。しかし創造的破壊に伴うイノベーションの側面を強調するあまり彼らのカリスマ性に目を奪われ、その精神論を語ることは、その本質を見失う狭義の解釈ではないかと私は思います。
今、世の中で起こっていることの多くは既存の考え方(パラダイム)の転換期(シフト)にあると言っても過言ではないかと思います。アントレプレナーシップは、個人や組織が現状でコントロールしている経営資源にとらわれることなく、資源の新結合を実行し、機会を追及するプロセスであり、今の時代もっとも必要とされる能力ではないでしょうか。既存の経営資源を超えて、ビジネスの機会を開拓していくプロセスにおいて必要となる能力をスキル化していく「考え方」「在り方」を示す概念ともいえます。
日本では、「起業家」と「企業家」を混同されていることが多く、アントレプレナーは、新しく会社を立ち上げる起業の意味でつかわれてきたようです。イノベーションが大切になるのは、起業のフェーズだけではなく大企業でも中小企業でも行政機関でも重要です。アントレプレナーという用語は、二つの意味で用いられるとして違いを区別している研究者もいます。一つは「新たな企業を創造し組織化する者」として、また一方は「アイディアを経済的に実行可能なものに転換する者」としてのイノベーターとしてとらえています。前者を「企業を組織化するアントレプレナー」後者を「革新するアントレプレナー」とみなしています。(Baumol 1993)
アントプレナーシップを描ける社員を多く抱える組織がこれからの時代をけん引していくことは間違いないと思います。アントレプレナーは、自らの意思決定に対して個人的責任を負うこと望み、自身の能力や技術による結果を求めます。個人的目標達成の意識が高く、問題解決にある程度のリスクを負い、個人的イノベーションとセルフコーチング能力も高いです。このような人材の能力開発が、震災からの復興を目指す現在の福島県にもっと必要なことであり、私自身その支援をこれからも係り続けたいと思います。