高等教育における職業教育重視

 文部科学省が高等教育機関での職業教育重視を目指す有識者会議の立ち上げからの労働政策の展望について書かれた青山学院大猪木教授の論文を読むことができました。明らかにされている文科省の基本的な考えは、経済・産業界の動向として雇用環境の変化、人材需要の高度化、職業の多様化の中で、職業実践的な教育に特化した枠組みと人材ニーズと高等教育機関が行う職業教育の期待が高まっており、そのための枠組みの整備が求められているとしています。先生は高等教育機関を「職業訓練機関」と「人材派遣会社」を統合するイメージを受けると書かれています。


 そのために考慮すべき点として、4点ほど挙げられていますが、なかでも特筆すべきは経済・産業界の動向、人材需要を敏感に把握し、可能な限りこれに即応した教育を行うことを重視すべきであるとしています。そもそも企業経営者、行政、あるいは研究者が予測しても、労働市場の変化の速度と多様性を読み取ることはできないし、それに対処できるのは「市場による調整機能」しかないと言われています。



  職業大学で教員の専門分野と教科内容の動きを「即戦力」の観点から長期的に見とおすことができないからこそ、日本では一般教育での多様化に対応できる能力の基礎となる原理学習は重視されます。欧米との比較で日本の職業教育の在り方等についてよく議論されますが、アメリカなどで個人がキャリア目標を定め教育に自ら投資するのは、社会的階層を上昇する手段であり、一企業に長く務めることを前提していません。またキャリア転換や失敗から這い上がることも容易な社会的調整機能も彼の国には文化としてあります。



 現実での職場の仕事は、先生が書かれている通りに複雑かつ高度であり、多様で広汎な力量が要求され、その多くは日本では実地の経験(OJT)を通して獲得されるものがほとんどです。実地での仕事をする者の知識と技能そして判断力をくみ上げるシステムこそ日本に強みです。高等教育機関は、言語表現と思考を核とした教養教育に力を注ぎ、企業は人材の移行プロセスを考える場合、要求する職位職階の技能と熟練のキャリアを明らかにすることが急務ではないかと私は考えます。