「生涯現役社会の実現に向けた検討会」報告書

  厚生労働省は5日、「生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会」が取りまとめた報告書を公表しました。厚労省は、この報告書の方向性を踏まえ、生涯現役社会の実現に向けた具体的な取組を検討するとしています。報告書では、生涯現役社会の必要性と基本的視点から、人口減少社会における持続可能な成長の実現と65歳以降においても働く意欲のある高年齢者の雇用・就業環境の整備と本人の持つ能力と時間を最大限に活用できる機会を提供するとしています。


 現状と課題および施策の方向性として、企業における高年齢者の雇用の促進、65歳以降の継続雇用や雇い入れに取り組む企業支援、職業生活設計と能力開発支援、中高齢者の再就職支援などを掲げています。団塊の世代は平成24年に65歳となり、企業における継続雇用の終了を迎えています。その後の大きなボリュームのある高年齢者が既にセカンドライフに入ることで、日本の労働力減少はますます拍車がかかる状況下にあり本格的な検討を要する問題になっています。



 

    日本は、高年齢者雇用については、他国に比べて高年齢者層の労働力率や就業意欲は長らく大変高い水準にある明らかな強みがあります。働くことを生きがいとする勤労観が、60歳以降の就業を85%以上の人が望む結果として表れています。しかし、問題がないわけではありません。多くの企業では60歳以上の就業についても希望の仕事や雇用形態を用意することもできずにいますし、また労働者側も中高年になって新たな資格を取り、まったく経験のない仕事を就くことは難しいと思います。


 65歳以降にあっても、未経験のセカンドキャリアを描いて良い結果になるとは限りませんが、若年期からのキャリア形成の延長線上に60歳以降のキャリアパスを描いて準備することも必要になる時代かもしれません。また、企業にあっても事業・組織戦略のもとで従業員との方向性を調整しながら長期的視野に立った能力開発と雇用環境の整備、自己啓発を支援する体制作りが必要ではないでしょうか。本来の日本的雇用慣習である組織内人材育成の延長線上に企業の明るい将来が見える気がします。