人手不足

 つい一昨年まで、「働きたい人は大勢いるよ」と言っていた経営者の方が多かったのですが昨年から一変しました。ハローワーク、求人広告と何をやっても人が集まらないと嘆く経営者の方が多くいらっしゃいます。多くの職種で同様な状態ですが、特にサービス、小売業、飲食業、宿泊業など人が介在してなりたつ業種、いわゆる「労働集約型事業」では、深刻です。弊事務所へのご相談では、労働力も必要ですが、仕事やサービスの質も問われ、また教育する人材のいない中、解決策を求める内容が多いようです。

 

 最近、19世紀末の、仕事の体系的研究者であるテイラーが頭に浮かびます。仕事を、課業管理、作業の標準化、作業管理のための組織化、この3つの原理による労働者管理法(科学的管理法)によって、先進国の生産性を飛躍的に向上させた人物です。当時の経営者の「成り行き経営」と、労働者の非効率的生産、組織的怠業の社会的な背景によって考え出されたシステムですが、批判はあるものの経営管理論の礎になったことは間違いありません。



 テイラーは、基本的作業を明らかにして分析、論理的に順序付ける「課業の概念」を提唱しました。私も人手不足の対策として、一日のやるべき仕事を明らかにして(課業管理)、「作業の標準化」を「見える化」できないかと考えましたが、一時しのぎの対策で企業の人材育成・定着にはつながりません。20世紀初頭、テーラー・システムが輸入された日本では、概念の骨幹である「課業管理」を行わずの独自の経営管理手法を生み出しました。私は、日本人の素晴らしさはこのようなところだと思います。

 

 テイラーはホワイトカラー、ブルーカラーの対立を生み出したとの批判が多くありますが、人間力を信じるドラッカーでさえ、仕事の科学におけるニュートンあるいはアルキメデスだったと絶賛しています。未だにテイラーの考え方が色あせないのは「課業」の概念です。特に日本のように人材の育成、定着を経営の柱に置く国は、キャリアパスの構築には欠かせない考え方です。労働者の人間性を軽視していると批判の多いテイラーですが、「知識労働者」の概念を最初に示したのも彼です。人間は「労働のノルマ」だけで長年働かせることは無理だとわかっていたのでしょう。