雇用不安が社会に害をなす

 ドラッカーの言葉です。「経済的な不安ではなく、心理的な不安が社会を不安定化する。恐怖をもたらす。しかもその恐怖は未知にして予測不能なものであるがゆえに、生贄と罪人を求める。雇用の合理性と予測可能性を回復して、初めて企業の経営政策も有効たりうる。雇用対策こそ早道である。雇用不安さえ取り除くならば、社会、企業、働く者のニーズからして、企業は社会的機関として立派にその機能を果たしうる」・・・まさに1990年代以降の日本の姿ではなかったでしょうか。

 

  日本の雇用システムは、中程度の景気循環に対しては、新規採用の抑制、企業内の配置転換や労働者の抱え込み、労働者の再訓練といった対応により、失業を発生させないで、長期雇用を維持する制度として比較的うまく機能してきました。長期雇用制度によって、企業特殊熟練の蓄積という生産性にプラスの効果をもたらすこともできました。バブル崩壊以降、失業の可能性が高まるという雇用不安の存在は、人々の将来の生涯所得を低下させるような方向に働く上、その不確実性も高めます。雇用不安は、将来の失業による所得低下を予想させ、消費の低下要因となってきました。

 

  昨日、安倍内閣は労働者派遣法改正案を閣議決定しました。派遣社員を受け入れる期間の制限が事実上なくなるため、「派遣の固定化につながる」との批判は根強く、条文ミスや衆院解散で2度廃案になりましたが、内容を修正して再提出しました。現在は、秘書等の「専門26業務」に限って無制限に派遣社員を認め、それ以外の仕事は最長3年とされる法律は一定の要件を持って制限なく受け入れることができるようになります。


 もともと「専門26業務」は。業務を迅速かつ適確に行なうために専門的知識や技術などを必要とする業務、または特別の雇用管理を必要とする業務のことをいい、臨時的、一時的にその期間だけ派遣を受け入れることができるので中小企業にとっては良い制度です。しかし、禁止業務を除くすべての仕事にそれを認めることは雇用不安につながり、社会をより不安定にしてしまうのではないでしょうか。