2019年・年次有給休暇の取得義務化と対策について

働き方改革関連法案の成立により、労働基準法が改正され年10日以上有給休暇がある従業員に対して、会社は毎年、時季を指定して年5日の有給休暇を与えることが義務付けられました。対象者は、入社後6か月が経過している正社員又はフルタイムの契約社員(パート社員)、入社後3年以上経過している週4日出勤のパート社員などです。パート社員の場合は、週の勤務日数によって違いがありますが、直近1年の出勤率が8割以上であれば権利が発生します。
日本人の年次有給休暇の取得率は、政府の2020年まで年休取得率70%の数値目標とは開きがあり(2015年:48.7%)、世界30か国でもなかなか最下位を脱出することができません。日本人は有給休暇を取ることに罪悪感を感じている割合が6割以上あり、社会全体としてそのような考え方が有給休暇取得率の低さにつながっているとの指摘が多々あります。九州のある企業では、社員の誕生日に合わせて有給休暇の取得させるなど年休取得促進策の展開に合わせて、長時間労働の抑制・削減を進めたところ、社員ひとり一人が生産性の向上を実感できる状況になった事例があります。業務効率の向上にプラスの効果が期待できます。
休暇が取りにくい生活が常態化すれば、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性が高くなり、生産性は低下すると考えられ始めています。また、今後、有給休暇取得の促進に前向きな企業とそうでない企業とでは、人材の定着率にも大きく影響します。パート社員にも、積極的に有給休暇を与えている企業は、統計上の定着率も高いです。賞与支給の原資あるならば、法律で義務付けられた有給休暇の原資に回すべきではないかと私は考えます。
ちなみに今回の時期指定義務化の免除となる企業は、全社的に5日以上、全社員が有給休暇を自主的に取得ができている、または既に計画的付与で5日以上付与されている場合などです。
今回、何らかの対策を必要とするらば、パートで働く人には、扶養の範囲内を要件とする人も多いので、年末集中する就業調整を避けるために年間計画表による個人別付与が良いかもしれません。また、企業・事業所ごとのメンテナンスが必要であれば全社休日として、一斉付与もよいかもしれません。企業の特性にあった対策の工夫が必要です。
今回の法改正を契機に有給休暇のあり方、考え方を顧みれば、労働者の権利としない日本は国際的にみても特殊です。今後の働き方改革の進捗の中でも、労務コストとしての「有給休暇引当金」の議論はでてくると思います。有給休暇は会計処理上でも年度内消化が理想です。また、ちらほらと議論の姿が見える「解雇給付」も、IAS第19号従業員給付の会計処理上の問題のようなどで、日本の働き方改革が世界基準に向かうことは間違いなさそうです。