裁量労働制の正しい働き方

昨夜、テレビを見ていたら裁量労働制拡大含む、働き方改革関連法案の質疑で紛糾する予算委員会の様子が放送されていました。政府側の裁量労働制の拡大につながる厚労省データーの誤用?・・政府答弁の姿勢に、この重大な問題に真摯に対応しようしない政府に、誠実さが感じられないと思うのは私だけではないと思います。今回の働き方改革関連法案の一括審議そのものに無理があり、長時間労働是正の法改正のスピードあげる話と、それにブレーキを駆けそうな今回の裁量労働制の業務拡大は、まったく真逆の矛盾議論です。ジョブ基準の裁量労働制を否定する議論はないと思いますが、その対象業務や対象労働者は熟慮しなければなりません。
そもそも労働基準法で認められているのは、業務の専門的な性質上、具体的な時間配分を労働者の裁量に認めたほうが良いとされる研究開発やゲーム開発などの専門業務、あるいは企業の経営の中核を担う部門での企画立案などの経営企画の二つの分野です。仕事の性質上、労働者の裁量に任せたほうが成果の出しやすい業務として厚労省の定める専門業務(労基法38条の3、則24条2-2)であり、労働者の有する知識や経験・能力が適切に遂行することができる企画業務(労基法第38条の4-1-1)に限定されています。この裁量労働制を導入するためには、具体的な時間配分の指示はしない、みなし労働時間(法定労働時間を超える場合、36条協定締結と固定残業代が一般的と思われます。)、健康確保措置や苦情処理措置の労使協定の定めと労働基準監督署への届け出が必要です。長時間労働につながりやすい働き方、現実に違法ケースが多いので運用の厳格さは当然だと思います。
対象業務の性質上、若年労働者は対象者となりにくいことは容易に想像できると思います。時間の管理も労働者に任せることになりますが、類似と思われるフレックスタイムとは全く別もので、実労働時間に拘わらず労使協定で定める時間をみなして計算する労働時間制度です。みなし労働時間以外の残業代は原則、発生しません。(休日については異論あり) 実労働時間は考慮されない働き方とされていますが、裁量労働制にも労働時間に概念はありますので、みなし労働時間と実労働時間があまりにもかけ離れたケースでは、労使で検討する必要があります。
出退勤時間が決められている、指揮命令ある、休日出勤があるなど労働者に労働時間の裁量がないケースは考えられない制度です。
裁量労働制に一定の年収要件などを定義し、高度プロフェッショナルとして営業の業務等を拡大議論がありますが、企業において営業のない仕事は少ないので、「営業職」は際限なく、本来の立法趣旨から外れて拡大する可能性が大きいです。現在の裁量労働制の業務範囲でも成果を生み出すののは容易ではありませんし、自分の裁量で働くことができない、断れない若年労働者をこの制度の対象者とすることは長時間労働を容認する結果になりかねないと思われます。