年次有給休暇取得義務と就業規則について

 働き方改革関連法の中でも、会社への影響が大きい「年次有給休暇の年5日の取得義務」が4月1日から始まります。年間10日以上の有給休暇があるフルタイム、パートタイムを問わずすべての労働者に、これからは会社側が最低5日の有給休暇を消化させなければならなくなります。日本商工会議所が今年1月に発表した「有給休暇取得義務化」をはじめとする法改正準備状況の調査では、内容・時期について「知らない」とした回答が100人未満企業で約3割であることが判明しています。

 

 有給休暇を会社の時季指定とする場合、就業規則の改定が必要になります。アルバイトやパートタイマー労働者を使っていても週の勤務日数、勤続年数に応じて10日間の有給休暇の付与される対象労働者になります。年5日の確実な取得を義務付けるので、会社が労働者の意見を聞いて意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させることになります。パート・アルバイトに有給休暇を取らせていなかった会社では影響が大きいと思いますが、1名でも5日未満の有給休暇しか取得していない労働者がいれば違反になりますので工夫して時季を指定してください。

 

 労基法上の年次有給休暇ではないが、別の休暇制度で休暇を与えているのでそれを使えないかとの質問を受けることがありますが、労働条件の不利益変更にあたり有給休暇の消化にはなりません。改めて時期指定の年次有給休暇を与える必要がありますので、ほぼすべての会社に就業規則の改定が必要になると思われます。厚生労働省では既にモデル条文を公開していますが、前述にあるように5日については労働者の意見を聴取して、時季を指定して取得させる旨を規程する必要があります。年次有給休暇の計画的付与に関して労使協定を行う場合、一斉付与、グループ別付与、個人別付与が考えられます。

 

 休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(労基法第89条)であるために、対象労働者の範囲・時季指定の方法などについて就業規則の記載しなければなりません。(違反した場合、30万円以下の罰金に処せられる場合があります。)運用においての実務対応では、一斉付与日を設けることや有給発生の基準日を統一するなど休暇を管理しやすい方法が必要になることもあります。また、有給休暇取得に関して時間単位取得の要望がでたりすることがありますが、これらを整理して取得が確実な方法を選んで就業規則の改定を行います。

 

 半日単位・時間単位の有給での対応に混乱されることがあるかもしれませんが、社会保険労務士に相談するなど確実な取得を心掛けてください。