外部労働市場と人的資源の確保

 「働き方改革実行計画」(平成29年3月)において、「単線型の日本のキャリアパスでは、ライフステージに合った仕事の選択がしにくい。これに対し、転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行を確立すれば、労働者が自分にあった働き方を選択して自分のキャリアを設計できるようになり、付加価値の高い産業への転職・再就職を通じて国全体の生産性の向上につながる。」とされました。新規学卒後の適職選択過程、出産・育児、老親介護等、職業キャリアにおける一連の時間軸の中で、中途採用、転職・再就職の要望が強まっています。このような現状を受け、年齢にかかわりない転職・再就職者の受け入れ促進のために。企業および国が取り組むことが望ましい事項としての指針を定めました。(平成30年3月30日厚生労働省告示第159号)

 

 転職・再就職のかかわる課題として、離職理由の多くは「賃金」「賃金以外の労働条件」となっている中で、多くの転職希望者が賃金の上昇や賃金以外の労働条件の改善を望んでいる一方で、年齢が上がるにつれて転職後の賃金が上がりにくい現状があります。そのための解決策として、企業が人物・能力本位の採用の観点に立ち、中途採用者に期待する職業能力等を明確にした上で、求める専門性や業種・職種に関らず発揮される職務遂行能力についての基準と適正な評価が求められます。

 

 「働き方改革」の目指す方向性のひとつとして、同一企業の内部にあって様々な職務につくことで職業能力を高め、昇進・昇格がもたらされる従来の「内部労働市場」から、企業が必要とする人材を公的・民間の職業紹介事業を通じて労働力の取引をする「外部労働市場」への転換を図っています。働き方の多様化やワークライフバランスを重視する人が増えることで注目を集め始めていますが、企業にとっては良い人材を確保するためには、働きやすい条件や環境が必要不可欠であり、教育・研修体制の充実や適性な評価につながる給与体制も重要な要素になります。

 

 今後、ICT・AI・IoT等の更なる進展により、産業・事業構造の変化が見込まれ、こうした変化に対応として、自身の能力を生かすために転職ニーズがさらに高まると考えられます。地方の多くの中小企業にとっては好機と思われる変化が目の前に迫っています。