同一労働同一賃金ガイドラインと賃金の決定基準

 2018年12月28日、「同一労働同一賃金ガイドライン案」が正式にガイドラインとして公表されました。目的、基本的な考え方、短時間・有期雇用労働者、派遣労働者、協定対象派遣労働者の5部構成になっています。1部、目的において、我が国の正社員・非正規雇用労働者の間には、欧州と比較して大きな待遇の相違があることを認めつつ、賃金等の待遇は労使の話し合いによって決定されることが基本であることを明言しています。職務の内容や職務に必要な能力等の内容を明確化し、それら内容と賃金等の待遇との関係を含めた制度体系全体を労使で共有することが肝要としています。あくまでも民事の分野であるということです。

 

 第2部、基本的な考え方では、正社員と非正規雇用とに間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差が不合理なものではないかの原則となる考え方と具体例を示してたものであること。その上で、労使により、個別具体的な事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれるとしています。ガイドライン適用にあたっては、「実際に待遇差が生じていること」がポイントになります。実際に生じている格差の是正を目指していますので、生じていない場合は、ガイドラインは適用されません。もう一つのポイントが「賃金決定基準やルールが同じこと」です。違っている場合は、ガイドラインは適用せず、職務内容、職務内容や配置の変更範囲、その他事情を総合的に判断して、その違いを明確にする必要があります。

 

 目的・基本的な考え方を見る限り、このガイドラインが適用できる中小企業は、多くはないかと思われます。一般的に賃金の決定基準は、正社員は「職務遂行能力」が多く、パートタイム労働者は「世間相場」とされる時給を用いる例が多いです。まったく違う賃金の決定基準をもって、違いを明確にすることは、ほぼ不可能に近いと思われるのと、2年後の法施行を考えると同じ「仕事基準」の賃金制度を再構築したほうが得策です。職務分析、職務記述書、階層別賃金テーブルなど「働き方改革」の方向性である欧州型の制度に近づきます。また、今後さらに悪化する働き手不足に対応し、パート労働者の能力開発や複線型人事制度の構築も可能になります。時間はかかりますが、職務記述書は業務改善・労働時間短縮にも使えます。検討の余地はあるのではないでしょうか。

 

 

「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要.pdf
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