同一労働同一賃金・取り組みの課題について

 「働き方改革」の中で、同一労働同一賃金の実現は、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、多様な働き方を可能として働く一人一人が、より良い将来の展望を持ち得る社会を目指しています。それに伴い、パートタイム労働法、労働契約法(有期雇用契約)、労働者派遣法の3つの法律が一体的に改正されました。正規社員と非正規社員に雇用形態の違いによる不合理差を解消することが目的ですので、正社員間、非正規社員間の起こる待遇差は対象外とならないことから、有期雇用社員から無期フルタイム社員に転換すると救済対象から外れるのではいかと危惧する声もあるようです。

 

 「同一労働同一賃金ガイドライン」では、待遇改善にどのような姿勢で臨むかという基本的なスタンスが明確でないために、具体例を実際の事案に応用することの難しさを指摘する方も多いようです。また、ガイドラインでの大きな前提要件は、ガイドラインに記載されたそれぞれの待遇の原則や具体例は、いずれも正規社員と非正規社員とで共通の賃金の決定基準・ルールを採用していることです。多くの中小企業では、正規社員は職務遂行能力、非正規社員は地域別最低賃金を意識した世間相場が一般的と思われますので、ガイドラインを使わずに職務内容、配置の変更範囲等の実態に照らして、その待遇差が不合理ではない説明が求められます。

 

 さらに「同一労働」とは何か?・・これらの定義を各社がしっかり議論し、決定することから始める必要があります。また日本の伝統的な職能資格制度によるジョブローテーションが一般的な大手企業では、労働内容・賃金水準の異なる部署への人事異動が困難になる可能性があります。しかし、職務評価、職務分析などの人事制度の基礎的なデーターを持つので、ガイドラインに沿って取り組むことができると思います。

 職務分析や評価について、厚生労働省からパートタイム労働者と正社員との均等・均衡待遇を実現できる制度設計のための職務評価ツールが提供されています。議論の入り口として活用することができますので、下記よりダウンロードください。

        *パートタイマー労働者雇用改善にために*

  

  職務評価ツールは、社内の職務内容を比較・相対的に測定する「人基準(役割)」の職務分掌に近い内容です。この評価を入り口として、「仕事基準」の分析へと議論が進むはずです。取り組みのもう一つの課題として、「同一賃金」をどのように考えるかの問題ですが、正規社員の賃金に非正規社員の賃金を合わせるというのが一般的になっていくと思われます。そうなると総人件費の高騰を招くことになりますが、正規社員の合意なく待遇を引き下げることは原則できません。

 

 同一労働同一賃金は、働き方改革の重要な位置づけにあります。戦後日本の属人的働き方(人に仕事を配置する)から、職務基準(仕事に人を配置する)とすることで、誰がどの仕事を担当するか(課業管理)から、業務の連携・改善、人の関係性から組織を強化する取り組みへと進むと思います。賃金の高騰に備えて原資をどのように工面するかですが、労働時間の短縮、業務改善から生産性の向上を当面の数値目標とする取り組みが、直ぐできることだと思います。様々な前向きな意見が、社員の皆さんから出されると思います。