労働時間等の見直しと人材確保

 日本は人口減少社会となり、働き手の確保が難しくなってきていることと、共働き世帯が増え、育児・介護など労働者の健康や生活事情・生き方に合わせた柔軟な勤務形態の整備が必要になっています。労働者が会社に合わせて働く時代から、会社が労働者の健康やライフスタイルに応じて柔軟な働き方を提供することが、人手不足解消につながる時代になってきています。平成29年10月からの「労働時間等見直しガイドライン」は、改正され地域や子育ての実情に応じ年休取得に配慮することや公民としての権利、公の職務の執行に際して休暇制度の検討などが盛り込まれています。仕事と生活の調和に向けた国民的な取り組みとして、労働時間の短縮は企業に課せられた課題となりそうです。

 

 現実として来年4月から施行される「年次有給休暇の年5日取得義務」(労働基準法)や「労働時間の状況把握の実効性確保義務」(労働安全衛生法)は、ワークライフバランス実現の取り組みとしてすべての事業主に求められる内容です。労働者の健康と充実した生活のために所定外労働の削減を図ることはもちろんですが、人員配置の考慮や業務内容の見直し・労働者それぞれが抱える問題や企業経営の実態を踏まえた労使間の話し合いから始めるのが良いでしょう。年次有給休暇の時季指定・計画的付与については、来年以降どのような方法が良いのか導入に向けた整備を進める必要があります。労働時間の把握については、今まで裁量労働制適用者・管理監督者の一部労働者の把握義務が除外されていましたが、健康管理の観点から高プロ適用者を除くすべての労働者が義務となります。

 

 平成29年1月20日「労働時間の適正な把握のための使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が「基準」から格上げされて策定されました。「労働時間」は、顧問・関与先からも質問の多い労務管理上の重要な項目ですので、ガイドラインを参考にされるとよいと思います。賃金台帳については労働基準法において、労働者ごとの労働日数、労働時間数、時間外労働時間数など事項を適正に入力する必要があり、同法に違反した場合、罰金30万円以下に処せられることがあります。年次有給休暇についても対象労働者の指定義務に違反した場合、30万以下の罰金に処せられる可能性があります。

 

 罰金がある・なしではなく、有能な人材の確保には労働時間見直しは必要です。法律の制定は過去の問題や社会的要請の基づいて行われるものです。来年以降、「働き方改革」により、いろいろな法律が制定されますが、中小企業にとって人材確保の好機と捉え、法律の先をいく事業計画を構築するチャンスかと思います。