労働安全衛生法の改正について

働き方改革関連法では、労働時間の上限規制や同一労働同一賃金に関する内容については、取り上げられることが多いのですが、労働安全衛生法においても重要な多肢に渡る改正が行われました。改正の概要と留意点などについてご紹介します。
今回の改正の目的として「産業医・産業保健機能の強化」が挙げられます。長時間労働やメンタル不調など健康リスクが高い職場環境において産業医による面接指導や健康指導が確実に実施されるように、産業医の独立性や中立性を高める仕組みが取り入れられました。
産業医に関しては、事業者への「勧告」が平成8年より導入されていましたが、今回施行規則より法律に格上げされ制度が明確化されました。但し、勧告をしようとするときは事業主の意見を求めることが義務付けられています。
一見矛盾するように思われますが、勧告がその趣旨を含めて事業者に十分理解され、かつ適切に共有されることで労働者の健康管理等のために有効に機能させることが趣旨のようです。事業者の情報提供義務も強化され従来の長時間労働者に関する情報のほか、就業上の措置の内容やその他、労働者の業務に関する情報でかつ健康管理を行うために必要な情報が加わりました。情報提供義務は、労働者50未満の産業医選任義務はありませんが、医師等に健康管理を行わせることにしている事業所では努力義務です。
今回の改正は罰則付き労働時間の上限規制からもわかるように、長時間労働者の健康確保の強化が大きな柱です。長時間労働者への医師による面接指導の対象要件が1月100時間超から1月80時間超に見直され、管理・監督にある労働者、みなし労働時間制の労働者も申し出により面接指導の実施を行うことを事業者に義務付けています。1か月80時間を超える時間外・休日労働を行った労働者に対してその旨を通知する義務も改正条文として追加されました。
これにより事業者の「労働時間の状況の把握義務」が強化されました。紛らわしいのですが、「労働時間の適正な管理義務」との違いは、労働時間は労働基準法を根拠法とする割増賃金の支払いを目的としています。それに対して「労働時間の状況の把握義務」における労働時間の状況は、労働安全衛生法を根拠法として面接指導を適正に行うことを目的としています。労基法上の割増賃金支払いの適用除外であっても、労働時間に関しての状況についての把握は、事業者の義務ということになりますのでご注意ください。