低成果労働者の対応について

福島県では平成29年に年間有効求人倍率が年間を通して前年同月比を超える厳しい人手不足が続いています。地方の中小零細企業では、近々の労働力不足で現業の継続不安にある企業は別として、優秀な人材の確保は企業の将来に拘わる問題でもあり、有期雇用や試用期間の延長等により人物を見極めようとする動きが増えています。ありがちなトライアル雇用による3か月の有期雇用契約では、求職者に脆弱な経営体質であることや繁忙期の人材確保の目的を見透かされるケースが多いようで応募が少ないようです。今回の問題提起として、試用期間中(解雇権留保付労働契約)ついて、本採用の可否が企業側にあり、勤務態度や能力・スキルを見極め期待した程度ではないからの理由で本採用としないことができると思われることが多いようですが、労使間トラブルが度々発生しています。
試用期間中でも、極端な能力不足や度重なる無断欠勤など企業が主張する理由に正当性がなければ解雇されることがないというのは本採用後と同様です。試用期間はその判断が本採用後に比べれば範囲や程度が穏やかな条件であるだけで経営者の気分や相性で本採用拒否(解雇)はあってはなりません。このことは労働契約法第16条において「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。労働契約での労働者の義務は、使用者の指揮命令下にあって労働することであり、請負契約のように仕事の完成による成果の合意を約束するものでありません。したがって相対評価である人事評価が低いことを理由とした解雇は無効の判例もあり(日本アイ・ビー・エム事件)、能力・適性不足の具体的事由の存在と立証の責任は使用者にあるとされています。
試用期間中であってもその間に企業内で活用できるように指導・教育を重ね業務成果が向上するように取り組むのが企業側の責任でもあります。とはいっても、注意・指導を重ねても成果があがらない状況が改善されないこともあります。実務的には一定の期間を定め、解雇ではなく退職勧奨による自己都合退職につなげることが多いのですが、慎重な対応が求められます。事前にやるべき業務内容と業務量を上司・部下との相互確認を行い、毎日の記録、定期的な指導・教育・注意などを経て、改善見込みがない場合、配転措置の検討等を行い、職務に不向きということで退職の勧奨を行うことになります。人手不足で、少数精鋭の組織再編を目指す企業が増える中、いらぬ労使トラブルは避けたいものです。