介護離職は経営を左右する。

2015年に掲げられた一億総活躍社会に向けて、安心につながる社会保障として「介護離職ゼロ」を掲げました。看護・介護を理由とする離職者が10年で2倍になり、介護理離職者の増加が経済の減速につながることが懸念されています。近年、企業のワーク・ライフ・バランスの取り組みが、子育てから介護に広がってきています。将来の要介護高齢者の増加が、家庭内での専業主婦の女性が担う傾向から、家庭内の介護者にかかわる負担増加や役割分担、共働きの増加などから働く男性が携わる必要性が高まってきています。また、企業としても介護離職防止への対策の必要性が高まってきています。
「仕事と介護を両立することのに対する不安」と題した40~50歳正社員に向けた厚労省委託の調査では、「非常に不安を感じる」「不安を感じる」と回答した人が男性で74.4%、女性では79.8%を占めました。具体的な介護に対する不安を調べた調査結果では、「公的介護保険制度の仕組みがわからない」(53.3%)、「介護のいつまで続くかわからないこと」(52.2%)、「仕事を辞めずに両立する仕組みがわからない(44.7%)と介護の関する制度や企業制度がわからないことが離職に拍車をかけるのではないかと思われます。
厚生労働省では、「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル」(平成27年)を公開しています。その中で以下の5つの取り組みを掲げています。
①従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
②制度設計・見直し
③介護に直面する前の従業員の支援
④介護に直面した従業員の支援
⑤働き方改革
従業員300名以上の企業での取り組みの実例が紹介されていますが、一人の中堅幹部職員の介護離職で経営が左右されかねない中小・零細企業では
より取り組みの優先順位を決定して施策を講じる必要があります。

突然、親の介護で休職となっても仕事の引継ぎや人の配置など本人はもちろん企業としても困られることかと思います。介護のついてわからないことが多く、漫然とした不安を抱える従業員に向けて企業として支援することの周知や介護について話しやすい職場つくりが重要です。
育児・介護休業に関する就業規則が現行法令に合致し企業内の制度が周知されているかなどの確認したうえで、ハンドブック、相談窓口などの運用の検討が必要です。
日ごろから一人仕事(ブラックボックス化)とはせず、組織での情報共有化に取り組むことも大事です。人手不足の時代、限られた人員で仕事をしている企業が多いのではないでしょうか。仕事と介護の両立支援に向けた取り組みは企業の実情にあった制度設計と運用が重要です。